仏教における地獄を調べてみたpart2
先日は殺生に関する地獄を見ていきました。
今日は”盗み”と”邪淫”を働いた者が堕ちる地獄を見ていきましょう!
仏教における地獄と黒縄地獄
殺生のうえに盗みを重ねた者がこの地獄に堕ちると説かれています。
等活地獄の下に位置します。
獄卒は罪人を捕らえて、熱く焼けた鉄の地面に伏し倒し、同じく熱く焼けた縄で身体に墨縄をうち、これまた熱く焼けた鉄の斧もしくはノコギリでその跡にそって切り、裂き、削ります。
また、左右に大きく鉄の山があり、その山の上に鉄の幢(はたほこ)を立て、鉄の縄をはり、罪人に鉄の山を背負わせて縄の上を渡らせせます。すると罪人は縄から落ちて砕け、あるいは鉄の鼎に突き落とされて煮られます。この苦しみは等活地獄の苦しみの10倍と言われています。
ここにも十六小地獄があるはずですが、「正法念処経」には三種類の名前しか伝わっていません。
等喚受苦処
対象は生前に間違った法を説いた者、崖から投身自殺した者。
燃える黒縄に縛られて、計り知れないほど高い崖の上から鉄刀が突き出す熱した地面に落とされます。その上で燃える牙を持つ犬に食い殺されます。
黒縄地獄にありながら、落ちる条件は「盗み」ではなく「嘘」や「邪見」にあたるりますが、理由は不明。
旃荼処
対象は病人が用いるべき薬品を病人でもないのに用いた中毒患者。
烏、鷺、猪などが罪人の眼球や舌をつついて抜き出し、獄卒たちが杵や大斧で罪人を打ち据えます。
畏熟処
対象は貪欲のために人を殺し、飲食物を奪って飢え渇かせた者。
畏鷲処とも言います。
鉄の棘が生えた地面を、杖、火炎の鉄刀、弓矢などを持った獄卒に追い回され、休む間もなくいつまでも走らされます。転倒すると金棒で何度も殴られ、水をかけられます。
仏教における地獄と衆合地獄
殺生・盗みに加えて淫らな行いを繰り返した者が落ちます( 邪淫は夫、妻で無い者と性行為をする事は勿論、夫や妻でも不適当とされる行為”姦淫”も含まれる)。
堆圧地獄の別名を持ちます。
黒縄地獄の下に位置し、その10倍の苦を受けます。
多くの罪人が、相対する鉄の山が両方から崩れ落ち、圧殺されるなどの苦を受けます。
大量受苦悩処
異常な方法で性行為を行った罪、それを覗き見して真似した罪に対応。
炎の剣で肛門から腰かけて串刺しにされます。
また男は睾丸、女は卵巣を抜かれる。
割刳処
口を使い、性行為した罪に対応。
口に釘を打って頭から貫通させ、それを急に抜き取り、今度は口から耳へ貫いて抜き取り・・・これら一連の罰を連続で行い苦しめます。
また、溶けた赤銅を口から注ぎ込んで内臓を焼きます。
脈脈断処
男性に淫らな性行為を迫った女性の罪に対応。
ここでも、筒を通して口の中に溶けた銅を流さますが、割刳処と違い「私は今、孤独です」と大声で叫ぶようにうながされます。
悪見処
他人の子供に性的虐待を行った罪に対応
自分自身の子供が陰部から串刺しになる様子を見せられます。
また己の肛門から熱した銅が注がれ内臓が焼き爛れる苦しみを受けます。
団処
牛や馬を相手に性行為(獣姦)を行った罪に対応
地獄に牛や馬がおり、罪人が生前と同じように性行為を行おうとすると、その牛馬の体内の炎が性器を通じて罪人の体を焼きつくします。
忍苦処
戦争などで手に入れた他人の妻を寝取ったり、それを他人に与えた者が落ちます。
獄卒たちが罪人を木から逆さ吊りにし、下からの炎で焼き殺すことを繰り返します。これにより息をすると肺まで燃え上がります。
朱誅処
羊やロバを相手に性行為を行ったうえ、仏を敬わなかった者が落ちます。
鉄の蟻の大群にたかられ、肉や骨、内臓まで喰われます。
何何奚処
兄弟、姉妹を相手に性行為を行った者が落ちます。
燃え上がる炎に焼かれ、鉄の烏の大群に食い尽くされます。その苦痛の叫び声は5000由旬にわたって響くとされています。
更にここに落ちるべき罪人には転生前の中有の段階でその声が聞こえるのですが、善悪が倒錯した罪人にはそれが喜びの声に聞こえてしまい、その地獄に行きたいと願ってしまうと言います。
涙火出処
禁を犯した尼僧と性行為を行った者が落ちます。
その名の通りに罪人が流した涙が炎となって当人を焼きます。
加えて、獄卒に毒樹のトゲを目に刺され、鉄のはさみで肛門を裂かれ、そこに溶けた白蝋を流し込まれます。
一切根滅処
口であれ、肛門であれ、女性器でない場所を使ってその女性と性行為を行った者が落ちます。
獄卒が罪人の口を鉄叉で広げて熱銅を流し込み、耳に白蝋を流し込みます。
鉄の蟻が罪人の目を喰い、刀の雨が降ると言います。
無彼岸受苦処
妻以外の女性と性行為を行った者が落ちます。
火責め、刀責め、熱灰責め、病苦による責めなど、次から次へと責め苦がやってきます。
鉢頭摩処
僧となりながら俗人だったときに付き合っていた女性を忘れられず、夢の中で関係し、さらに人々に淫欲の功徳を説いた者が落ちます。
鉢頭摩とは紅蓮華のことで、あたり一面その赤色をしています。
獄卒に瓶の中で煮られ、鉄杵で突かれます。苦しむ罪人が辺りを見回すと、池の中に蓮華が見えます。そこに行けば救われると思って走り出すと、地面に敷き詰められた鉄鉤に足を引き裂かれ、やっとの思いでたどりつくと背後に控えた獄卒に刀や斧で散々に打たれます。
大鉢頭摩処
出家僧ではないのに僧であると偽り、しかも戒律に従わなかった者が落ちます。
広さ500由旬、長さ100由旬の熱した白蝋の河があり、罪人がそこに落ちると身体がバラバラ、骨は石に、肉は泥になってしまいます。
やがて、身体が魚になりますが、鳥についばまれます。
火盆処
出家僧ではないのに僧のフリをして、そのうえで女性に興味を持ったり、身の回りの生活品に執着し、正しい法を行わなかった者が落ちます。
正法念処経によると、炎で満たされていることからこの名があると言います。
ロウソクのように、罪人たち自身の身体が炎に包まれ燃え盛り、泣き叫ぶたびに口や目鼻から炎が体内に入り、骨まで燃やし尽くします。
鉄末火処
出家僧だと詐称し、そのフリをしたまま、女性の舞いや笑い声、装飾品に心引かれてみだらな想像にふけった者が落ちます。
500由旬の高さの熱鉄の壁の囲いの中で、炎の熱鉄の雨が降りそそぎ焼かれ続けます。
最後に
いかがだったでしょうか?
等活地獄は名前だけ登場しながらも詳細は語られない小地獄はありましたが、黒縄地獄には名前すら登場しない小地獄が13か所もあります。そのお陰で、地獄社会の金字塔である”鬼灯の冷徹”の一期OPにも不明の文字がズラリ(上図)。
想像力切れを起こしたのでしょうか?