仏教における地獄を調べてみたpart4
仏教における地獄を調べてみたシリーズもpart4に差し掛かりました。
これは地獄の道のりは長く、地獄の部署は多い証です。また、罪にあった罰を用意してくれている”地獄のおもてなし精神”の現れでもあります。
日本は地獄に至るまで奥ゆかしいのですね。
仏教における地獄と焦熱地獄
殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄語に加え、邪見(仏教の教えとは相容れない考えを説き、また実践する)の罪を犯した者が堕ちる地獄です。
大叫喚地獄の下に位置します。
常に極熱で焼かれ焦げています。この焦熱地獄の炎に比べれば、それまでの地獄の炎は雪のように冷たく感じられるほどであり、豆粒ほどの焦熱地獄の火を地上に持って来ただけでも地上の全てが一瞬で焼き尽くされるといいます。
大焼処
「殺生をすることで天に転生することができる」という邪見を述べた者が落ちます。
もろもろの火の他に、文字通り「後悔の炎」が生じて内側から罪人を焼き焦がします。
分荼梨迦処
「飢えて死ぬことで天に昇ることができる」と説いた者が落ちます。
体中から炎が吹き出して苦しんでいる罪人の耳に、「ここには分荼梨迦の池があり、水が飲める」という声が聞こえます。その声に従って池に飛び込むとそこは水ではなく炎の中で、さらに苦しむ羽目になります。
龍旋処
「欲、怒り、愚かさを断てば涅槃に入れる、という教えは嘘だ」と説いた者、礼儀作法の意味を解さなかった者が落ちます。
身体から毒を発する悪龍がたくさんおり、罪人の周囲で激しく回転します。罪人は毒と回転の摩擦でぼろぼろに砕かれます。
赤銅弥泥魚旋処
「この世に存在する一切は大自在天の作ったもので、輪廻転生などはない」と説いた者が落ちます。
高熱の銅汁の海に鉄のがおり、溺れる罪人の上半身を噛みます。下半身は銅の海で焼かれ、また海中の悪虫に食いつかれます。
鉄鑊処
「たとえ殺人を犯しても、もしもその殺された人が天に生まれ変われるなら殺人は悪くない」と説いた者が落ちます。
「平等受苦無力無救」「火常熱沸」「鋸葉水生」「極利刀鬘」「極熱沸水」「多饒悪蛇」という六つの巨大な釜があり、罪人を煮ます。
血河漂処
何度となく戒に違反しながら「苦行すれば全ての罪は許されるのだからかまわない」と考え、自らの身体を傷つけるような苦行を行った者が落ちます。
文字通り血の河に漂う地獄で、河の中に群れ成して住む丸虫が罪人に取り付いて焼き焦がします。
饒骨髄虫処
今よりもよい世界ではなく、当たり前の人間界に転生することを望んで戒を破り、牛の糞に火をつけて自らの身を焼いた者が落ちます。
鉄の杵で打たれて蜜蝋のようにどろどろにされ、前世の罪のために虫となって地獄に落ちた者たちと混ぜ合わされて肉の山となり、火をつけて燃やされます。
一切人熟処
邪教を信じ、天界に転生するために山林や草むらなどに放火した者が落ちます。
罪人の目の前で家族や友人など、かけがえのない人々が焼かれる姿を見せ、精神的な責め苦を与えます。
無終没入処
「動物や人間を焼き殺したものは火を喜ばせたという理由で幸福を得られる」と考え、実行した者が落ちます。
燃え盛る巨大な山に登らされ、手、足、頭、腰、眼、脳などに分解されてそれぞれが燃やされます。
大鉢特摩処
僧たちに食事を供する大斎の期間中に殺人をすれば望みが叶うと考え、実行した者が落ちます。
花弁の中に無数の長い棘がある紅蓮華の花の中に落とされ、全身串刺しになります。しかも傷口から炎が吹き出します。
悪険岸処
「水死したものは那羅延天に転生し、永遠にその世界に住み続ける」と説いた者が落ちます。
獄卒たちが「あの大きな山を越えれば苦を受けることはなくなる」と言うのでその通りにすると、山の向こうの切り立った崖に落ち、崖下の石の刀に刺さって燃やされます。
金剛骨処
「この世にある一切のものは因縁などとは関係なく生じたり滅したりするので、仏法を信じるなどばからしい」と説いた者が落ちます。
獄卒に刀で肉を削られ骨だけにされるが、この骨は金剛のように硬くなっています。すると、罪人に騙されたものたちが現れてその骨を手に取り打ち合わせます。勿論、骨だけになっても罪人は苦痛を感じます。
黒鉄縄𢶏刀解受苦処
「人間の行いの善や悪などはすべて因縁によって決まっており、変えられないのだから、あれこれ頑張ってみても無意味だ」と説いた者が落ちます。
鉄の綱で縛られ、足から頭にかけて刀で細かく裂かれます。
那迦虫柱悪火受苦処
「宇宙にはこの世もあの世も存在しない」と説いた者が落ちます。
罪人の頭を貫通させた大きな釘を、そのまま地面に打ち立てます。その後罪人の体内に虫が湧き出し、血を吸い尽くした後に肉まで食べます。
闇火風処
「この世の法則には無常ばかりではなく一定不変なものもある」と説いた者が落ちます。
悪風に吹き飛ばされた罪人の身体が風の渦の中で回転し続けます。時折別の強風が吹くと身体が砕かれて砂のようになるが、すぐ再生して同じことのくり返しになります。
金剛嘴蜂処
「人間の世界は因縁によって生じたので、全ては因縁によって決定されている」と説いた者が落ちます。
極卒がはさみで罪人の肉を少しずつちぎり取り、さらにそれを自分自身に喰わせます。
分荼離迦
『往生要集』に現れれますが、詳細は不明。
仏教における地獄と大焦熱地獄
殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄語、邪見に加えて、童女や尼僧など清く聖なる者を犯した「犯持戒人」の罪が加わった者が落とされます。
焦熱地獄の下に位置します。
極熱で焼かれて焦げます。その炎は最大で高さ500由旬、横幅200由旬あるといいます。
罪人の苦しみの声は地獄から3000由旬離れた場所でも聞こえます。
この地獄に落ちる罪人は、死の三日前から中有(転生待ち)の段階にも地獄と同じ苦しみを受けます。
一切方焦熱処
仏教の在家の女性信者を犯した者が落ちます。
全ての場所、空にまで炎が満ちており、罪人たちは常に焼かれます。
また、獄卒が罪人を巻物のように足から巻いていき、全身の血が頭部に集まったところで釘を打ちつけます。
大身悪吼可畏之処
出家はしたがまだ僧にはなっていない女性を犯した者が落ちます。
獄卒が毛抜きはさみで、全身の毛を肉もろとも一本ずつ抜いて苦しめます。
火髻処
仏法を正しく身に付けて正しく行っている女性を犯した者が落ちます。
弓の弦のように細長い体に、鋭い牙を持った虫がたくさんおり、獄卒に縛られた罪人の肛門から侵入、内臓から脳まで食い尽くして頭部を食い破り外に出でます。
雨縷鬘抖擻処
国家の危機的状況の混乱に乗じて、戒律を守っている尼僧を犯した者が落ちます。
回転する刀があちこちに生えており、身動きするとたちまち切り裂かれます。勿論、死ぬとすぐ再生し、また切られて死にます。
吒々々嚌処
(不淫戒を)受戒した正行の女性と性行為を行った者が落ちます。
激しい風に吹き上げられてバラバラになり、肉があちこちに撒き散らされます。
また、金剛の鼠に喰い散らかされ、芥子粒のように細かくなります。
雨沙火処
仏門に入ったばかりの尼僧を犯した者が落ちます。
500由旬の大火炎の底に金剛の砂の巨大な蟻地獄があり、灼熱の砂に飲み込まれます。砂の中には鋭く尖って突き刺さるものも混ざっています。
内熱沸処
三宝に帰依し、五戒を受けた女性に対して非法な事を行った者が落ちます。
あたりが炎に包まれている中で、五つの火山だけが木が茂り池を持ちます。それを見て火山に行くと暴風に巻き上げられ、火山内部で焼き尽くされます。
普受一切資生苦悩処
僧侶でありながら、戒を受けた女性を酒で酔わせてたぶらかし、道心を破壊し終わったあとで、財物を与えて性行為を行った者が落ちます。
炎の刀が皮膚をはぎ、肉がむき出しになった所をさらに炎で焼きます。また、獄卒が溶けた鉄を身体に注ぎ込みます。
鞞多羅尼処
嫌がる女性と無理矢理に関係した者が落ちます。
暗黒の中で高熱の鉄の杖が雨のように降り、罪人に次々と突き刺さります。
無間闇処
善を治めた人物を女性に誘惑させて堕落させた者が落ちます。
金剛さえ突き破るほど鋭い嘴を持った虫が、文字通り罪人の骨の髄まで食い荒らします。
苦髻処
自分と関係しなければ王に讒言して罰を受けさせると脅迫し、立派な僧を誘惑して堕落させた女性が落ちます。
獄卒に鉄のヤスリで肉を削り落とされます。
髪愧烏処
酒に酔って姉妹を犯した者が落ちます。
灼熱の炉に入れられ、獄卒がふいごで火力を強めます。
また、太鼓の中に入れられ、獄卒がそれを激しく打ち鳴らします。
悲苦吼処
特別な儀式の最中であるにも関わらず、姉妹と関係を持った者が落ちます。
一見すると平和そうな林があり、みんなそこに逃れるが、実はそこには巨大な千の頭の竜がたくさんいて、罪人を口の中で噛み砕きます。
罪人は口の中で生き返り、また噛み砕かれ、同じことのくり返しになります。
大悲処
教典などを学んでいる善人の妻や娘などをだまして犯した者が落ちます。
びっしりと刀が生えたヤスリのような床があり、獄卒にそこにこすり付けられ、形がなくなるまで擦り減らされます。
無非闇処
自分の子の妻を犯した者が落ちます。
沸騰する釜の中で他の罪人共々煮られた後、杵でつかれて一塊の団子にされます。
木転処
命を救ってくれた恩人の妻を犯した者が落ちます。
沸騰した河の中で逆さに煮られ、巨大な魚に喰われます。
最後に
いかがだったでしょうか?
焦熱地獄・大焦熱地獄に送られる罪人はかなり限定的であると印象を受けました。”「動物や人間を焼き殺したものは火を喜ばせたという理由で幸福を得られる」と考え実行した者”なんて確実に誰かを思い浮かべて決めたに違いありません。
地獄の内容を知らせるということは一種の戒め・忠告になります。もしかしたら地獄が成立した時代、このような迷信が広まっていたのかもしれません。
地獄は想像力豊かな世界です。受け止める側である我々も想像力を豊かにして読み解くべきでしょう。