林檎とフクロウ

故きを温ねて新しきを知る――哲学や宗教学などの人文科学を読み解き、生きる道を見出すことを目的としたブログです。

仏教における地獄を調べてみたpart3

連日、地獄巡りのように地獄を紹介しています。

今日は、殺生、盗み、邪淫に加え、飲酒と妄語の罪を犯した者が堕ちる地獄「叫喚地獄」「大叫喚地獄」をご紹介させていただきます。

早速見ていきましょう。

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仏教における地獄と叫喚地獄

殺生・盗み・邪淫に加えて、酒に関係する悪事を犯した「飲酒」の罪を犯した者が落とされる地獄。

もっとも、ただ酒を飲んだり売買した者は、この地獄には堕ちません。酒に毒を入れて人殺しをしたり、他人に酒を飲ませて悪事を働くように仕向けたりすることなどが叫喚地獄に堕ちる条件になります。

衆合地獄の下に位置します。

罪人は熱湯の大釜や猛火の鉄室に入れられ、号泣、叫喚します。その泣き喚き、許しを請い哀願する声を聞いた獄卒はさらに怒り狂い、罪人をますます責め苛みます

また、頭が金色、目から火を噴かせる赤い服を着た巨大な獄卒が罪人を追い回して弓矢で射ります。他にも、罪人は焼けた鉄の地面を走らされ、鉄の棒で打ち砕かれます

大吼処

心身を清める斎戒を行っている人に酒を与えた者が落ちます。

人に酒を飲ませたように溶けた白蝋を無理矢理飲ませられます

苦痛のあまり罪人が空まで届く咆吼の叫び声をあげると、獄卒はますますいきり立ち、罪人を苦しめます

普声処

修行中に気が緩んで酒を飲んだ者、自ら飲酒を楽しむばかりか、受戒したばかりの人に酒を飲ませた者が落ちます。

獄卒に鉄の杵で打たれて苦しめられ、その叫び声が地獄を通り越して鉄囲山世界全てに響き渡ります。

髪火流処

五戒を守っている人に酒を与えて戒を破らせた者が落ちます。

熱鉄の犬が罪人の足に噛み付き、鉄のくちばしを持った鷲が頭蓋骨に穴を開けて脳髄を飲み、狐たちが内臓を食い尽くします。

火末虫処

水で薄めた酒を売って大儲けした者たちが落ちます。

地・水・火・風の四大元素から来る四百四病の全てが存在します(それぞれが、地上の人間を死滅させる威力を持ちます)。

また、罪人の身体から無数の虫が湧き出し肉や骨を食い破る

熱鉄火杵処

鳥や獣に酒を与えて、酔わせた後に捕らえて殺した者が落ちます。

獄卒が振り下ろす鉄の杵で追い回され、捕まると砂のごとく細かく砕かれます。肉体が再生しても今度は刀で少しずつ削られ、細かい肉片にされます。

雨炎火石処

旅人に酒を飲ませ酔わせて財産を奪った者、象に酒を飲ませて暴れさせ、多くの人々を殺した者などが落ちます。

赤く焼けて炎を発する石の雨が罪人たちを撃ち殺します。また、溶けた銅とハンダと血が混ざった河が流れており、罪人たちを押し流しながら焼きます。

他にも、全身から炎を発して燃え盛る巨大象がいて罪人を押し潰します

殺殺処

貞淑な婦人に酒を飲ませて酔わせて関係した者が落ちます。

獄卒たちが熱鉄の鉤で罪人の男根を引き抜きます。抜かれるたびに再生し、同じことが繰り返されます。

罪人が逃げ出すと、今度は烏、鷲、鳶の大群に食い尽くされます

鉄林曠野処

酒に毒薬を混ぜて人に与えた者が落ちます。

燃え盛る鉄の車輪に縛り付けられ、回転させたところを的当ての如く弓で射られます

普闇処

酒を売る仕事をしながら、人の無知に付け込んで、少しの酒を高価な値段で売った者が落ちます。

真っ暗闇の中で獄卒に散々に打たれ、その後炎の中で頭から二つに引き裂かれます

閻魔羅遮曠野処

病人や妊婦に酒を与えて、彼らの財産や飲食物を奪った者が落ちます。

罪人は足から順に頭まで燃えていき、その上で獄卒に鉄刀で足から順に頭まで切り刺されます

剣林処

荒野を旅する人をだまして泥酔させ、持ち物や命を奪った者が落ちます。

燃え盛る石の雨、沸騰した血と銅汁と白蝋の河がある中で、獄卒に刀や殻竿で打たれます

地獄の広さは500由旬とされ、暴風によって剣になっている木の葉が飛び、罪人の手足・体を切り裂きます

大剣林処

人里離れた荒野の街道で酒を売った者が落ちます。

高さ1由旬の剣樹の林があり、獄卒にそこへ追い立てられます。

剣樹の幹は炎に包まれ、葉は鋭い刃になっており、揺れるたびに無数に落下して下のものを切り裂きます。逃げ出したくても外には常に獄卒がいます。

芭蕉烟林処

貞淑な婦人に密かに酒を飲ませていたずらしようとした者が落ちます。

煙が充満していて前が見えず、床は熱した鉄板になっていて焼かれます

煙火林処

悪人に酒を与えて、憎む相手に復讐させた者が落ちます。

熱風に吹き上げられ、他の罪人と空中でぶつかり合いながら砂のように砕けてしまいます

火雲霧処

他人に酒を飲ませて酔わせ、物笑いにした者たちが落ちます。

地面から100mの高さまで吹き上がる炎の熱風で舞い上げられ、空中で回転し、縄のようにねじれ、ついには消滅してしまいます。

分別苦処

使用人に酒を与えて勇気付け、動物を殺生させた者が落ちます。

獄卒が様々な苦しみを与えた上で、説教して反省させます。その上でまたさらに様々な苦悩を与えます

 

仏教における地獄と大叫喚地獄

叫喚地獄の下に位置します。

対象は殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄語(うそ)に纏わる罪を犯した者。

叫喚地獄で使われる鍋や釜より大きな物が使われ、罪人は更に大きな苦を受け叫び喚きます。

十六小地獄といいつつ、何故かこの大叫喚地獄のみ18種類の名が伝わっています。理由は不明。

吼々処

恩を仇で返した者、自分を信頼してくれる古くからの友人に対して嘘をついた者が落ちます。

獄卒が罪人の顎に穴をあけて舌を引き出し、毒の泥を塗って焼け爛れたところに毒虫がたかります

受苦無有数量処

嘘をでっち上げて、目上の人を陥れた者が落ちます。

獄卒に打たれて傷つくと、その傷口に草を植えられます。成長し根を張ったところで引き抜かれます

受堅苦悩不可忍耐処

王や貴族の部下で、保身のために嘘をついた者、またはその地位を利用して嘘をついた者が落ちます。

罪人たちの体内の蛇が動き回り、肉や内臓を食い荒らします。

随意圧処

他人の田畑を奪い取るために嘘をついた者が落ちます。

さながら鍛冶師が刀を作るときのように、罪人を鉄に見立てて火で焼き、ふいごで火力を強め、鉄槌で打たれ、引き延ばされ、瓶の中の湯で固められ、また火で焼く、ということが延々くり返されます。

一切闇処

婦女を犯して裁判にかけられながら、王の前で嘘をついてしらを切り通し、かえって相手の婦女を犯罪者に仕立て上げた者が落ちます。

頭を裂いて舌を引き出し、それを熱鉄の刀で引き裂き、舌が生えてくるとまた同じ事を繰り返します。

人闇煙処

実際は十分に財産があるのに財産がないと嘘をつき、本当は手に入れる資格がないものを皆と一緒に分け合って手に入れた者が落ちます。

獄卒に細かく身体を裂かれ、生き返るとまだ柔らかいうちにまた裂かれます。

また、骨の中に虫が生じて内側から食われます

如飛虫堕処

穀物であれ衣であれ、僧侶の所有物によって商売を行い、安く買い高く売り、得たものを僧侶と共有せず、「儲けがなかった」と嘘をつく者が落ちます。

獄卒が罪人を斧で切り裂き、秤で計って、群がる犬達に食わせます。

死活等処

出家人(僧侶)でもないのにその格好をし、人をだまして強盗を働いた者が落ちます。

獄卒に苦しめられる罪人たちの前に青蓮華の林が見え、そこに救いを求めて駆け寄りますが、炎の中に飛び込むことになります

また、目や両手足を奪われて抵抗できないまま焼き殺されます

異々転処

優れた陰陽師で正しく占うことができ、世人の信用を得ていながら、占いで嘘をつき、国土や立派な人物を失う原因を作った者が落ちます。

目の前に父母、妻子、親友などの幻が出現するので、救いを求めて駆け寄ると、灼熱の河に落ちて煮られます

再生して河から出ると、再び同様の幻が出現し、駆け寄ると地面の鉄鉤で切り裂かれる。また、上下からの回転ノコギリで切り刻まれます

唐悕望処

病気で苦しんだり、生活に困ったりしている人が助けを求めているのに、助けると口先ばかりで嘘をついて、実際には何もしてやらなかった者が落ちます。

目の前においしそうな料理が出現するので駆け寄ると、途中に生えた鉄鉤で傷つき、しかもたどり着くと実は料理に見えたのは熱鉄や糞尿の池で、その中に落ちて苦しみます

また、夜露をしのぐ家を貸すといって貸さなかった者は、深さ50由旬の瓶の中で高熱の鉄汁に逆さまに浸されるなど、嘘に応じた罰があります。

双逼悩処

村々の会合などで嘘をついた者、悪口を言って集団の和を乱した者が落ちます。

炎の牙の獅子がおり、罪人を口の中で何度も噛んで苦しめます。

迭相圧処

親兄弟親戚縁者などが争っているときに、自分の身近な者が得するように嘘をついた者が落ちます。

罪人に騙されたものたちが出現し、罪人の肉をはさみで切り取って口の中で噛んで苦しめます。ちなみに切り取られた肉片にも感覚があります。

金剛嘴烏処

病気で苦しむ人に薬を与えると言っておきながら与えなかった者が落ちます。

金剛のくちばしを持つカラスが罪人の肉を喰います。喰い尽くされると罪人は復活し、また始めから喰われます。

火鬘処

祝い事の最中に法を犯しておきながら、しらを切った者が落ちます。

獄卒が鉄板と鉄板の間に罪人を挟み、くり返しこすって血と肉の泥にしてしまいます。

受鋒苦処

布施しようと言っておきながら布施をしなかった者、布施の内容にケチをつけた者が落ちます。

獄卒に熱鉄の串で舌と口を刺されます。嘘をつくことはおろか泣き叫ぶこともできません。

受無辺苦処

船長でありながら海賊と結託し、船に乗っている商人達の財産を奪った者が落ちます。

熱鉄の金箸で舌を引き抜かれます。いくら抜いても舌は再生し、そのたびに抜かれます。さらに目を引き抜いたり、刀で肉を削られたりします。

血髄食処

王や領主の地位にあって税物を取り立てておきながら、まだ足りないと嘘をついて多くの税を取り上げた者が落ちます。

黒縄で縛られて木に逆さづりにされた上、金剛のくちばしのカラスに足を食われます。罪人は流れてきた自分の血を飲むことになります。

十一炎処

王、領主、長者のように人から信頼される立場にありながら、情によって偏った判断を下した者が落ちます。

10方向から炎が吹き出して罪人を焼き、罪人の体内から11番目の炎が生じて口から吹き出し舌を焼きます。

 

最後に

いかがだったでしょうか?

「嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれる」という言葉がありますが、まさに大叫喚地獄のことですね。

嘘は口に纏わる罰であるからか、大叫喚地獄では舌を抜かれたり、噛まれたりと、口を使った罰が多く見受けられます。目には目を、口には口を、とでも言いたいのでしょうか?

それにしても、罰を執行する獄卒の仕事はハードな肉体労働ばかりです。罰せられる方も大変ですが、罰する方も大変ですね。