林檎とフクロウ

故きを温ねて新しきを知る――哲学や宗教学などの人文科学を読み解き、生きる道を見出すことを目的としたブログです。

シャーマニズムについて調べてみた

先日、新型コロナウイルスの影響により恐山の夏の大祭が規模縮小するというニュースがありました。

その規模縮小の影響からか恐山には「イタコ」の姿も無かったと言います。

イタコと言えば死者の霊を呼び寄せることの出来るシャーマンです。

世界中にはイタコのようなシャーマンは山ほどいます。

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シャーマニズムと概要

シャーマニズムあるいはとは、シャーマン(巫師・祈祷師)の能力により成立している宗教宗教現象の総称です。

宗教学、民俗学、人類学(宗教人類学、文化人類学)等々で頻繁に議論されています。

 

シャーマニズムとシャーマン

シャーマンとはトランス状態に入って超自然的存在(霊、神霊、精霊、死霊など)と交信する現象を起こすとされる職能・人物のことです。

超自然的存在と交信する際、脱魂憑依(憑霊)のどちらか、または両方を行うと言われています。

トランス状態

トランス状態とは、通常とは異なった意識状態の一種。

中東研究科の羽仁礼は、トランス状態というのは、霊に憑依された時の霊媒や、心霊現象を起こしている時の霊媒などにみられることもあり、また人々が聖母マリアを目撃している最中やイエス・キリストを目撃している最中などもこの状態になる、と説明している

脱魂(ecstasy)

魂が肉体から離れた状態をエクスタシー状態と言います。この状態において、神仏などの霊的存在と直接接触したり交流する例は世界各地で見られます。

また、「夢というのは、睡眠中に霊魂が身体を離脱して経験した事柄」とする解釈は世界中で見られます。

ルーマニア宗教学者エリアーデ脱魂が原型でその後に憑霊がくる、とする仮説を提示しました。

憑依(憑霊)

憑依とは、霊などが乗り移ることです。憑霊とも言います。

宗教学者のファースによれば、「シャーマニズムにおける)憑依はトランスの一形態であり、通常ある人物に外在する霊がかれの行動を支配している証拠」と位置づけられています。

 

シャーマニズムの定義

シャーマニズムの定義は学者によって様々です。

地域

北アジアに限られるとする説と、世界中の他の地域で見られる諸現象を含める説があります。

脱魂と憑依

超自然的存在と交信する際、脱魂憑依(憑霊)のどちらを基本と捉えるかについても意見が分かれてます。

先述したように、ルーマニア宗教学者エリアーデ脱魂(ecstasy)のほうを本質的だとするが、イギリスの宗教学者マッカロックは憑依(possession)を重視し、ロンドンの人類学者I. M. ルイスは一方を強調することを批判しています。

また、シベリアなど北東アジア研究者は脱魂を重視し、東南アジアや南米の研究者は憑霊を重視し、日本や朝鮮半島の研究者は憑霊ないし折衷説をとる傾向があります。

宗教学者のポールソンは、脱魂と憑依を区別しつつ、脱魂ではシャマンはトランスの中でみずから行動するのでトランスが解けた後で体験内容を説明することができるのに対して、憑依ではシャマンに憑依した精霊や死霊が活躍するのでトランスから覚めても彼は何事が生じたのか説明できないとしました。

 

シャーマニズムと3つの要素

宗教人類学者の佐々木宏幹は、シャーマニズムには次のような3つの要素があるとします。

  1. トランスという特別の精神状態において脱魂または憑依(憑霊)が行われる
  2. 神仏・精霊などの超自然的存在と直接接触・交流・交信
  3. 社会的に一定の役割を持つ信仰と行動の体系

 

シャーマニズムとシャーマンの種類

脱魂型

シャーマンの霊魂が身体を離脱して霊界に赴き、諸精霊を使役してもろもろの役割を果たすタイプ。広義の精霊統御者型の一種。

精霊統御者型

補助霊を駆使してもろもろの役割を果たすタイプ。

霊媒型・憑霊型

シャーマンが神霊・精霊を自らの身体に憑依させ、人格変換が行われ、シャーマンは神霊自身として一人称で語るタイプ。

予言者型・霊感型

シャーマンは神霊・精霊と直接交信し、その意思を三人称で語るタイプ。このタイプではシャーマン自身の個人的意志があります。

見者型

神霊の姿が見え、或いは声が聞こえるタイプ。故に神霊の意思を三人称で語ります。

 

シャーマンになるには

人がシャーマンと認められる過程にはいくつかの種類があると考えられています。

召命型

ある日突然心身の異状(巫病)として現れ、神霊によって選ばれたものと見なされます。

選ばれようと願っていてもなれるものではないですが、選ばれてしまったら本人の意志で拒絶することも困難です。沖縄県周辺のウマレユタなどがこれにあたります。

世襲

血統により選ばれます。

霊的資質、人格が継承されると考えられます。

沖縄県周辺のノロなどがこれにあたります。

修行型

身体的理由(特に盲目)や経済的事情等からシャーマンになるための修行・学習を積みます。沖縄県周辺のナライユタ、日本の東北のイタコなどがこれにあたります。

 

シャーマニズムアブラハムの宗教

ユダヤ教キリスト教イスラム教における預言者も、神や天使などが憑依すると考えれば一種のシャーマン(予言者型)と見ることもできます。

 

シャーマニズムと日本

古来「巫女」と呼ばれる職能者が政治や軍事などの諸領域で活躍したことはよく知られています。

魏志倭人伝に記述された邪馬台国女王の卑弥呼が用いたという「鬼道」もシャーマニズムと言われています。

また日本書紀の、神代巻の天照大神崇神紀の倭迹迹日百襲姫垂仁紀の倭姫仲哀紀の神功皇后などもシャーマンの例として挙げられます。

 

最後に

アイヌトゥスクル下北半島の恐山におけるイタコ、沖縄県周辺のユタなど、現代にも各地域にシャーマンに属する人達がいます。彼らは時にご先祖様と、時に亡き友人と、時に自然界の精霊と交信します。

実にスピリチュアルで魔訶不思議ですね。それらを科学で以て解明しようとする科学者は多く居ますが、全てを解明するには至っていません。

もしかしたら現代はスピリチュアルとテクノロジーが共存する唯一の時代なのかもしれませんね。