浄土教の主な宗旨を調べてみた
先日お話したように、浄土教とは阿弥陀仏の極楽浄土に往生し成仏することを説く教えです。
この浄土思想を掲げる浄土教には様々な宗旨があります。
今回はそれらを紹介していきたいと思います。
- 1-1.融通念仏宗
- 1-2.融通念仏宗と教義
- 1-3.融通念仏宗と経論
- 1-4.融通念仏宗と念仏
- 2-1.浄土宗
- 2-2.浄土宗と教義
- 2-3.浄土宗と経論
- 2-4.浄土宗と宗派
- 3-1.浄土真宗
- 3-2.浄土真宗と教義
- 3-3.浄土真宗と経典
- 3-4.浄土真宗と念仏
- 3-5.浄土真宗とタブー
- 4-1.時宗
- 4-2.時宗と時衆
- 4-3.時宗と教義
- 4-4.時宗とご賦算
- 最後に
1-1.融通念仏宗
融通念仏宗は平安時代末期の1117年6月16日に天台宗の僧侶である聖応大師良忍によって開宗された宗派です。
天台宗、真言宗に次いで平安時代後期に成立した古い歴史を持つ宗派です。
1-2.融通念仏宗と教義
良忍は修行中に、阿弥陀如来から速疾往生(阿弥陀如来から誰もが速やかに仏の道に至る方法)の偈文「一人一切人 一切人一人 一行一切行 一切行一行 十界一念 融通念仏 億百万編 功徳円満」を授かり開宗した。これは、1人1人の唱える念仏の力が小さくとも全ての人の功徳となり、また他の人が唱えた念仏も自分や他の人の功徳になるという考えです。
1-3.融通念仏宗と経論
融通念仏宗は「華厳経」と「法華経」を正依としており、浄土系の宗派ですが、「浄土三部経」である「仏説無量寿経」「仏説観無量寿経」「仏説阿弥陀経」の3つは傍依としています。
1-4.融通念仏宗と念仏
融通念仏宗は「大念仏宗」とも呼ばれるように、念仏を非常に大切に捉えています。
融通念仏宗は、観想念仏ではなく、仏の名号を唱える称名念仏を重視することが最大特長であるといえます。
「南無阿弥陀仏」を口に出して唱えることによって、具体的に仏を感じ、功徳を互いに分かち合います。
2-1.浄土宗
浄土信仰に基づく日本仏教の宗旨で、承安5年(1175年)に法然によって開祖されました。
浄土宗の総本山は京都府京都市にある「知念院」であり、本尊となるのは阿弥陀仏阿弥陀如来です。
2-2.浄土宗と教義
仏教ではさまざまな修行が説かれています。どれも、私たちの抱える苦しみや悩みから自由になること――「さとり」に至るためのものです。でも、どうでしょう。その修行は誰もができることでしょうか。
いや、なかなかそれは難しい、というのが実際のところです。
時間的、物理的な制約もあるでしょう。しかし何より、煩悩という厚い壁が妨げとなっているからにほかなりません。そこで「お念仏の教え」があります。
浄土宗は、「専修念仏」を主な教えとし、「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えることで極楽往生できると考えらえています。
2-3.浄土宗と経論
釈迦によって説かれた「無量寿経」「観無量寿経」「阿弥陀経」の三部経がよりどころとされています。
2-4.浄土宗と宗派
浄土宗には大きく分けて「鎮西派」と「西山派」の二つの勢力が存在します。
西山派が「一類往生説」を説いているのに対して鎮西派は「二類各生説」が説かれています。
西山派の一類往生説というのは「念仏こそが極楽往生できる唯一の方法」という思想であり、自力では往生できないため他力によって往生しようという考え方です。
一方で鎮西派の二類各生説は「念仏は皆が極楽往生できる方法であり、善行を働くことも極楽往生するための方法になる」という思想のもとに成り立っています。この2つの思想において、極楽往生のための念仏に重きを置いているという点では同じであると言えます。しかし西山派は他力だけであるのに対し、鎮西派は他力でも自力でも極楽往生ができると説いているのが特徴です。
以上の思想の違いから、宗教法人浄土宗に西山派は含まれてはいません。
3-1.浄土真宗
浄土真宗は、鎌倉時代初期の僧である親鸞が、その師である法然によって明らかにされた浄土往生を説く真実の教えを継承し展開させた宗派です。
浄土真宗の寺社数は18000箇所以上にもなり、日本国内では最大の仏教勢力となっています。
3-2.浄土真宗と教義
浄土宗の本尊は、阿弥陀如来の木像や絵像ですが、浄土真宗は南無阿弥陀仏の名号のみを本尊とします。
悪人正機
阿弥陀仏が救済したい対象は、生きとし生ける全て者です。すべての衆生は、末法濁世を生きる煩悩具足の凡夫たる「悪人」とされています。よって自分は「悪人」であると目覚させられた者こそ、阿弥陀仏の救済の対象であることを知りえるという意である。
3-3.浄土真宗と経典
正依の経典は、浄土三部経です。しかし、
七高僧の著作についても重んじます。中でも天親の『浄土論』は、師である法然が三経一論と呼び、浄土三部経と並べて特に重んじた。
親鸞は、仏説無量寿経を『大無量寿経』『大経』と呼び特に重んじた。
3-4.浄土真宗と念仏
「浄土宗は、念仏を唱えることこそが進行を表す証」としているのに対し、「浄土真宗では、念仏を唱えようとする気持ちが大切」であることに重きをおいています。
浄土真宗が浄土宗と違う点は、極楽浄土への往生のためには念仏を唱えることが必須の条件にはなっていないところです。浄土宗が念仏を唱えることによって往生できるという考えをひといき超え、浄土真宗はさらに、念仏を唱えて信じているならば、その心が信仰心につながると説いています。さらに、念仏を唱えようとする気持ちだけでなく、日々の感謝の気持ちは口に出すべきとしています。
また浄土真宗では葬儀の際、般若心境を読みません。浄土真宗では、読経する努力によって報いを得るのではなく、阿弥陀如来のお力に一切をゆだねることで救われるという考え方があるため、あえて読経する必要がないのです。
3-5.浄土真宗とタブー
浄土真宗では宗派が始まった当初から食肉妻帯が認められていました(開祖である親鸞自らが公然と食肉妻帯を実行しました)。
一方で、浄土真宗は阿弥陀仏を唯一の信仰対象としていることから、他の宗教観が入り込む事を好まない傾向にあり、様々な立ち振る舞いがタブーとされていました。以下はその一例です。
- お盆にお飾り・迎え火・送り火(元は中国の文化だから)
- 日毎の吉兆、占い(元は中国の文化だから)
- 位牌の使用(元は中国の文化だから)
4-1.時宗
時宗は、鎌倉時代末期に興った浄土教の一宗派の日本仏教で、開祖は一遍です。
4-2.時宗と時衆
開祖とされる一遍には新たな宗派を立宗しようという意図はなく、その教団・成員も時衆と呼ばれていました。
時衆とは善導の観経疏の一節「道俗時衆等、各發無上心」から来ており、一日を6分割して不断念仏する集団を指します。
4-3.時宗と教義
融通念仏は、一人の念仏が万人の念仏と融合するという大念仏を説き、浄土宗では信心の表れとして念仏を唱える努力を重視し、念仏を唱えれば唱えるほど極楽浄土への往生も可能になると説きました。
時宗では、阿弥陀仏への信・不信は問わず、念仏さえ唱えれば往生できると説きました(仏の本願力は絶対であるがゆえに、それが信じない者にまで及ぶという解釈)。
4-4.時宗とご賦算
ご賦算は、念仏札を配る布教活動です。南無阿弥陀仏をひたすら唱えることで極楽浄土へ行ける、という教えを広めるために、一遍はこのような念仏札を配る活動が行われました。
念仏札には「南無阿弥陀仏決定往生六十万人」と書かれていました。これは「阿弥陀仏の徳によって、すべての人が往生して安楽の世界に行ける」というのが大まかな意味と解釈されています(諸説あり)。
最後に
いかがだったでしょうか?
融通念仏宗、浄土宗、浄土真宗、時宗を簡単にまとめてみました。どれも末法の時代出身だからか、死後の世界とも言える浄土に希望を見出しています。また、念仏を唱えるだけで良いという手軽さから、庶民をターゲットに据えていることもわかります。
大阪には「まんまんちゃんあん」というワードがあります。これも念仏であり、子供も唱えていた他ならぬ証拠ですね。
やはりどんな時代であっても手軽さは受け入れられます。