林檎とフクロウ

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ゾロアスター教について調べてみた

神話や悪魔好きならば一度は触れたことのある宗教・ゾロアスター教。その起源は古く、歴史はかなり複雑です。

今日はそんなゾロアスター教について調べてみました。

 

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ゾロアスター教と概要

イラン高原に住んでいた古代アーリア人は、ミスラやヴァーユなど様々な神を信仰する多神教でした。この原イラン多神教を基に、ザラスシュトラアフラ・マズダーを信仰対象として創設したのがゾロアスター教のルーツと考えられています。

ゾロアスター教は光(善)の象徴としての純粋な「火」を尊ぶため、拝火教とも呼ばれます。

 

ゾロアスター教聖典

ゾロアスター教聖典アヴェスターと言います。

紀元前1000年頃にイラン北東部で話されていたと思われる、インド・イラン語派の方言で記述されています。

紀元前550年のアケメネス朝時代には編纂されていましたが、、前330年にアレクサンドロス大王がこれを滅ぼした際の混乱で散逸しました。その後、サーサーン朝が成立して間もない3世紀頃に再編されました。

元々は21部にわたる構成だったらしいが、イスラム教の迫害を受けて破壊されたため、現存するテキストは4分の1に程度です。

その内容は、善悪二元論の神学、神話、神々への讃歌、呪文等から成り、大きく分けて以下の5部から成ります。

  • ヤスナ・・・祭儀書。全72章からなる。
  • ウィスプ・ラト・・・『ヤスナ』に手を加えた補遺的小祭儀書。「全ての権威者」を意味する。
  • ウィーデーウ・ダート・・・除魔書。宗教法の書で、清めの儀式次第などを説く。
  • ヤシュト・・・21の神々に捧げられた頌神書。ゾロアスター教神学完成以前のインド・イラン共通時代の神話が見られる。
  • ホゥワルタク・アパスターク・・・日常的に使用する比較的短い祈祷文を集めたもの。

 

ゾロアスター教と二元論

ゾロアスター教の教義の最大の特色は、善悪二元論です。

世界は至高神アフラ・マズダー率いるスプンタ・マンユ悪の霊アンラ・マンユ、およびそれに率いられる善神群悪神群の両勢力が互いに争う場とされています。またゾロアスター教では昼と夜の交替などもこの二神の抗争として捉えています。

 

ゾロアスター教と終末論

ゾロアスター教歴史観では、宇宙の始まりから終わりまでの期間は1万2000年とされ、3000年ずつ4つに区切られ、「(霊的+物質的)創造」「混合」「分離」の3期に分けられ、現在は「混合の時代」とされます。

アフラ・マズダーによる「創造」によって始まった「創造の時代」は完璧な世界だったが、アンラ・マンユの攻撃後は「混合の時代」に入り、善悪が入り混じって互いに闘争する時代となりました。

全人類は人生においてこの戦いに否応なく参加することになり、アフラ・マズダーやアムシャ・スプンタを崇拝して悪徳を自らの中から追い出し、善が勝つよう神々とともに悪に打ち克つ努力をしなければならないと説きました。苦しい日々が続くのは、悪い神が優勢なとき、楽しい日々が続くのは、善い神が勝利を続けているときなのだと教えたのです。

そして、やがて世界の終末には総審判(最後の審判がなさ、そこでは、死者も生者も改めて選別され、すべての悪が滅したのちの新世界で、最後の救世主によって永遠の生命をあたえられます(そのような世界観はその後のユダヤ教キリスト教などの一神教に影響を与えたと考えられている)。

それ以後の「分離の時代」には善悪は完全に分離し、アンラ・マンユと悪を選んだ者たちは消滅し、世界は再び完璧で理想的なものとなって、「分離の時代」は永遠に続くと考えられました。

 

ゾロアスター教と三徳

ゾロアスター教では人は、生涯において善思・善語・善行の3つの徳(三徳)の実践を求められます。人はその実践に応じて、臨終に裁きを受けて、死後は天国か地獄のいずれかへか旅立つと信じられました。

 

ゾロアスター教と儀式

ゾロアスター教で最重要の儀式とされるのがジャシャンです。これは、「感謝の儀式」とも呼ばれ、物質界・精神界に平和と秩序をもたらすと考えられています。

ゾロアスター教徒は、この儀式に参加することで生きていることの感謝の意を表し、儀式のなかでも感謝の念を捧げます。

 

ゾロアスター教と礼拝

ゾロアスター教の礼拝は、「拝火神殿」と称される礼拝所で行われます。

神殿は信者以外は立入禁止で、信者は礼拝所に入る前、手・顔を清め、クスティと呼ばれる祈りの儀式をおこないます。

クスティののち履物を脱いで建物に入り聖火の前に進んで、その灰を自分の顔に塗って聖なる火に対して礼拝を捧げます。

2019年現在、世界には167の拝火神殿が存在し、その内の45がムンバイに、105がインドの他の場所に、17がそれ以外の国にあります。

 

さいごに

二元論や終末論を有するゾロアスター教は神話としての側面も持っています。また、最後の審判や救世主の存在は後の宗教にも数多くの影響を与えたことが伺えます。流石は世界最古の一神教とも言われるだけありますね。