林檎とフクロウ

故きを温ねて新しきを知る――哲学や宗教学などの人文科学を読み解き、生きる道を見出すことを目的としたブログです。

シーク教について調べてみた

宗教大国インドの宗教を連日まとめてきました。

今日もインドの宗教をピックアップします。

そう、シーク教です。

 

f:id:kanzash_kito:20200726142018j:plain

 

シーク教と概要

シーク教は、16世紀にグル・ナーナクがインドで始めた宗教です。

シーク(スィク)はサンスクリット語の「シシュヤ」に由来する語で、弟子を意味します。それにより教徒達はグル・ナーナクの弟子であることを表明しています(グルとは導師または聖者という意味である)。

 

シーク教と信徒数

シーク教徒はインド全域に分布しているが、特に総本山ハリマンディルの所在地であるパンジャーブ地方に多いです。

世界で5番目に信者の多い宗教で、信徒数は約2400万人、日本には約2000人ほどが居住していると思われます。

富裕層が多く社会的に活躍する人が多いです。

 

シーク教と教義

シク教の教義はグル・ナーナクによる『グル・グラント・サーヒブ』のほか、その中に含まれる『ジャブジー』『アーサー・ディー・ヴァール』などの詩歌によって伝えられており、敬虔な教徒は毎日これらを朗踊します。

ナーナクはその作品を通じて、真の宗教は儀式や形式といった表面的なものへの執着を超えたところにあるとし、「イク・オンアカール(神は一つである)」というメッセージを繰り返すことで神の不可分性を説いています。

よって、神には色々な呼び名があり、それぞれの宗教によって表現のされ方の違いはあるが、諸宗教の本質は一つであるとし、教義の上では他宗教を排除することはありません。

但し、他宗教への批判を全くしないのではなく、ナーナクは、ヒンドゥーイスラム両教の形骸化、形式、儀式、慣行、苦行は批判をしています。

 

シーク教と目標

シク教の最終目標は、輪廻転生による再生を繰り返した末に、神と合一するムクティです。

ムクティに至れるかどうかは他人への奉仕とグルの恩寵にかかっており、ムクティと個人の性やカーストは無関係とされています。

人の一生を精神の超越への行程と考えるヒンドゥー教に対し、自分の事ばかり考える人間は5つの煩悩(傲慢、欲望、貪欲、憤怒、執着)に負けてしまうため、真のシク教徒は一生を常にグルに向け、神を真実の師(サット・グル)として仰ぎます

 

シーク教と生活

シク教徒は常に神の本質および存在(ナーム)を思い起こし、家庭生活に結びつけることを要求されます。

儀式、偶像崇拝、苦行、ヨーガ(ハタ・ヨーガの意味)、カースト、出家、迷信を否定し、世俗の職業に就いてそれに真摯に励むことを重んじます。

 

シーク教と戒律

戒律は開祖の時はなかったが、第10代グル・ゴーヴィンド・シングによってタバコ・アルコール飲料・麻薬が禁止されました

肉食は本人の自由に任されていますが、寺院での食事は菜食主義者に敬意を表して肉は供されません。

 

シーク教と寺院

シーク教の寺院はグルドワーラーと呼ばれ、小規模な寺院はダルバールと呼ばれます。

寺院に入るには入るには靴を脱いで頭の上にハンカチをのせて髪の毛を隠さなければなりません。

寺院ではグル・グラント・サーヒブを歌い、1時間程の礼拝の後にカラーパルシャードと呼ばれる砂糖菓子の神前の供物を恭しく食べます。これは日本で神社・仏壇の供えものを有難く頂戴するのと同種の習慣です。

更にランガルと呼ばれる食事が皆に振舞われます。これは無料で、内容はインド料理です(これはヒンドゥー教徒カーストが違う者と食事を共にしないことに対する批判)。

 

シーク教とターバン

シーク教ではターバン着用が戒律上の義務であり、インド陸軍の軍装では軍帽に代わる「制式ターバン」が定められています。またイギリスではオートバイの運転時のへるめっちょの着用も免除されています。

シーク教成立時より裕福で教養があり教育水準の高い層の帰依が多かったことから、イギリス統治時代のインドでは官吏や軍人として登用されるなど社会的に活躍する人材を多く輩出し、職務等で海外に渡航したインド人にターバンを巻いたシーク教徒を多く見かけるようになりました。それがターバンの着用はインド人の習俗であるとの世界的なイメージにつながったと考えられています。

 

シーク教と5つのK

1699年に第10代のグル=ゴービンド=シングは信者を一種の戦闘集団であるカールサー(清浄なる者たちの意味)を組織し、その構成員たちにシク教徒以外の者との違いを明確にするために5つのシンボルを与えました。

  • ケーシャ ・・・髪を切らず長く伸ばさなければならない。髪も髭も伸ばしたままにする。
  • カンガー ・・・身を整えるために櫛を携行する。
  • カラー ・・・右腕に鋼鉄製の腕輪をつける。力強さと揺るぎない結束を象徴する。
  • カッチャー ・・・ゆったりした半ズボン状のズボン下を着用する。
  • キルバーン ・・・剣―自己防衛と不正に対する闘争を象徴する―を常に携行する。

この外的な標識は「5つのK」として知られ、現在でもシク教徒が守らなければならないこととされています。

 

さいごに

いかがでしたか?

他宗教を否定しながらも他宗教に寛容な点や、生活全てを信仰に費やさない点など、他のインド宗教と比べて非常にゆるい印象ですね。このゆるさこそがシーク教の魅力であり、懐の深さなのでしょう。

これからも注目していきたいと思います。