林檎とフクロウ

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ジャイナ教について調べてみた

インドにおける宗教を語る上で外せないジャイナ教。少ない信徒数とは裏腹にインド文化の諸方面に影響を与え続けています。

今回は、そんなジャイナ教について調べてみました。

 

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ジャイナ教と概要

ジャイナ教は、マハーヴィーラを祖師と仰ぎ、特にアヒンサー(不害)の禁戒を厳守するなど徹底した苦行・禁欲主義をもって知られるインドの宗教です。

仏教と異なりインド以外の地にはほとんど伝わらなかっかものの、その国内に深く根を下ろしています。

 

ジャイナ教と信徒数

現在ジャイナ教徒は2001年のインド国勢調査(Census 2001)によれば450万人ほどを数え、これは全人口の0.5%にも満たないが、インド社会において事実上の一カーストを形成しています(ここでいうカーストとは職業的内婚集団と説明される「ジャーティ」の意味合い)。

インド社会でのジャイナ教徒の結束はきわめて固く婚姻も多くがジャイナ教間だけでおこなわれます。

 

ジャイナ教と起源

祖師ヴァルダマーナは当時の自由思想家の一人としてバラモン教の供犠や祭祀を批判し、あわせてヴェーダの権威を否定して、合理主義的な立場から独自の教理・学説をうち立てました。ついでにカースト制度も否定しています。

ヴァルダマーナは、真理は多様に言い表せると説き、一方的判断を避けて「相対的に考察」することを教えました。これがジャイナ教の「相対論」(アネーカーンタ・ヴァーダ)です。

具体的な表現法としては、「これである」「これではない」という断定的表現をさけ、常に「ある点からすると」という限定を付すべきだとする、「スヤード論」を説きました。

 

ジャイナ教と正典

ジャイナ教の正典として、もっとも古いものには14のプッヴァ(プールヴァ)と12のアンガがあったといい、はじめは師から弟子に口伝で伝えられていました。

しかし、紀元前300年頃には12のアンガの内最後の「ディッティヴァーヤ」が失われており、後にプッヴァも完全に失われました。

その後ヴァルダマーナの没後980年または993年にインドの北西部で結集が行われ、それまで口伝だったものを文字に書きとめ、それらの写本を集めて正典を確定しました。

この正典をアーガマと言います。

 

ジャイナ教と輪廻

ジャイナ教では精神と物質の二元論にたち、宇宙は生命と非生命から成り、生命は上昇性があって一切知であり幸福であるが、非生命は下降性をもち業の力で周囲に付着して輪廻の原因をつくるといいます。

人間が輪廻を解脱するには、正しい生活を送り、苦行によって業を消し去ることが必要であると説きます。

 

ジャイナ教三宝

ジャイナ教では宗教生活の基本的心得を、「三つの宝」と称して重んじます。

  1. 正しい信仰
  2. 正しい知識
  3. 正しい行い

解脱を目的として行われる宗教生活上で重要なのは3の正しい行い、つまり戒律に従って正しい実践生活を送ることであると説きます。

 

ジャイナ教と五禁戒

以下の五項目を五禁戒(マハーヴラタ)と定められています。

  1. 生きものを傷つけないこと(アヒンサー)
  2. 虚偽のことばを口にしないこと、
  3. 他人のものを取らないこと、
  4. 性的行為をいっさい行わないこと、
  5. 何ものも所有しないこと(無所有)

中でもアヒンサーの厳守はもっとも重要です。

ジャイナ教とアヒンサー

ジャイナ教はあらゆるものに生命を見いだし、動物・植物はもちろんのこと、地・水・火・風・大気にまで霊魂(ジーヴァ)の存在を認めました。

したがって、アヒンサーの禁戒のためにあらゆる機会に細心の注意を払います(宗派によっては空気中の小さな生物も殺さぬように白い小さな布きれで口を覆います)。

アヒンサーを守るための最良の方法は「断食」であり、もっとも理想的な死はサッレーカナー、「断食を続行して死にいたる」ことです。

 

さいごに

仏教と同時期に生まれたジャイナ教。しかし、苦行を否定する仏教に対して、ジャイナ教は苦行主義をとっています。その点が大きな違いかもしれません。

インドへの旅行の際は、ヒンドゥー教と併せて覚えておきたい宗教ですね。