林檎とフクロウ

故きを温ねて新しきを知る――哲学や宗教学などの人文科学を読み解き、生きる道を見出すことを目的としたブログです。

キリスト教における地獄について調べてみた

連日、仏教、イスラム教の地獄を見てきました。

となると、仲間外れには出来ないのがキリスト教における地獄です。

キリスト教においても、旧約聖書新約聖書で地獄に関する内容が数十箇所書かれており、天国と対の存在として重要視されています。

見ていきましょう。

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キリスト教における地獄と概要

キリスト教での地獄は一般的に、死後の刑罰の場所または状態霊魂が神の怒りに服する場所とされます。

また東方正教会では、地獄を霊魂の死後の状態に限定せず、愛する事が出来ない苦悩・神の光に浴する事が出来ない苦悩という霊魂の状態も指します。

 

キリスト教における2つの語彙

ギリシャ語の聖書の中には、「地獄」と訳されることがある語彙は、「ゲヘンナ」(γεεννα)「ハデース」(ᾍδης)の2種類があります。

キリスト教内でも地獄に対する捉え方が教派・神学傾向などによって異なり、ゲヘンナとハデースの間には厳然とした区別があるとする見解がある一方、区別は見出すもののそれほど大きな違いとは捉えない見解もあり、両概念については様々な捉え方があります。

ゲヘンナ(γεεννα)

ゲヘンナは原語では「ヒンノムの谷」の意。

この谷ではアハズ王の時代にモロク神に捧げる火祭に際して幼児犠牲が行われたこと、ヨシヤ王の改革で谷が汚されたことがあり、町の汚物の捨て場とされました。

このような経緯から、新約聖書ではゲヘンナは「来世の刑罰の場所」として考えられるようになりました。

厳然とした区別があるとする見解の一例に拠れば、ゲヘンナ最後の審判の後に神を信じない者が罰せられる場所であるとされます。

ハデース(ᾍδης)

ハデースはギリシャ語の「姿なく、おそろしい」の意から派生したもの。

ヘブライ語シェオル(黄泉)に当たります。

古代の神話では死者の影が住む地下の王国とされました。

厳然とした区別があるとする見解の一例に拠れば、ハデースは死から最後の審判復活までの期間だけ死者を受け入れる中立的な場所であるとします。

 

キリスト教における地獄とカトリック教会

地獄の存在

カトリック教会の公式な見解を記した”カトリック教会のカテキズム”には以下の文言が明記されています。

痛悔もせず、神の慈愛を受け入れもせず、大罪を犯したまま死ぬことは、わたしたち自身の自由意志による選択によって永遠に神から離れることを意味します。自ら神と至福者たちとの交わりから決定的に離れ去ったこの状態のことを『地獄』と表現する。

このように、永遠の地獄の存在と、神との決別の状態が永遠に続くことが地獄の苦しみの中心であると教えます。

また、『マタイ福音書』25章41節に、イエス・キリスト「永遠の火に入れ。」と言う場面が書かれていることを引用して、「永遠の火」という表現をしています。

教皇の見解

カトリック教皇ヨハネ・パウロ2世は、過去に、「地獄の問題はオリゲネスから始まって、常に思想家達を悩ませてきた」としながら、教会の長として教理上は地獄の存在を肯定せざるを得ないものの、「そこに誰が入っているかは誰一人として分からず、果たしてキリストを裏切ったユダがそこにいるかどうかさえわからない。」と述べたことがります。

地獄に堕ちる対象

誰が地獄に落ちるかについては、”カトリック教会のカテキズム”では以下の通りとされています。

「神は、誰一人地獄に予定してはいない。自分の意思で神から離れる態度を持ち続け、死ぬまで変えない人のみが地獄に落ちる。」

「教会は『一人も滅びないで皆が悔い改める』(ペトロの手紙二 3章9節より引用)ことを望む神のあわれみを祈願する。」

その一方で「わたしたちは自由意志を以って神を愛することを選ばない限り、神に結ばれることはできません。しかし、神に対し、隣人に対し、あるいは自分に対して大罪を犯すならば、神を愛することはできません。」と警鐘を鳴らしています。

 

キリスト教における地獄とプロテスタント(改革派教会)

改革派信仰の長老派教会では、永遠の地獄を強く主張し、伝統的に永遠の地獄の存在を認めてきました。

教理基準であるウェストミンスター信仰告白32章では、悪人の霊魂は死後、大いなる日のさばきまで、苦悩と徹底的暗黒のうちにありつづけるとされます。

また、イエス・キリストが再臨したとき、不信者は神に裁かれるために復活し、永遠の滅びを宣告されます。これにより、不信者はよみがえった体で、意識をもったまま、永遠に苦しみます

 

キリスト教における地獄と東方教会

地獄の存在

正教会において、自分自身を省みない人々、悪人・罪人が行くところとして、地獄があるとされています。

ただし、正教会において地獄とは、「自ら神を拒絶する状態」であり、神が人間を虐待する場所のようには捉えません。

地獄は誰がために

また、地獄は”他人のために用意されたものではなく、自分のために用意されたものである”とされています。

従って、まず自分が正教徒として痛悔をし、福音の言葉に畏れを以て接し、地獄の永遠の勝利者としてのハキリストのもとにひれ伏し、正教徒としての生活を取り戻すように、また全ての人の復活のために祈るように教えます。

地獄は永遠か

地獄は永遠であるのかという問題について、ロシア正教会の府主教イラリオン・アルフェエフは、「ゲエンナの世界は終わりを迎え、地獄は駆逐されるが、その終末がいつであるかは人の知恵では知りえない機密のうちに隠されている」と述べました。

 

霊魂消滅説・絶滅説

罪人が絶滅、消滅するとし、地獄、火の池での永遠の刑罰を否定する教理を霊魂消滅説(絶滅説)と呼ばれます。

これは、永遠のいのちを与えられていない人間の魂は、不滅性を持っていないという考えによるものです。

絶滅説は最終的に神が邪悪な人々を絶滅・消滅させ、義人だけに不滅性が与えられると断言します。

消滅論者は、邪悪な人々は彼らの罪のため、消滅する前に火の池で罰せられると信じます。

キリスト教弁証家のアルノビウスが4世紀にこの説を説いたが、一般には受け入れられず、第5ラテラノ総会議(1513年)にて異端とされました。

しかし19世紀になって、霊魂不滅を信じる一般的風潮にもかかわらず一部の神学者の間でこの説は受け入れられました。

現在霊魂消滅説をとる主な宗派はキリスト教系の新宗教諸派セブンスデー・アドベンチスト教会エホバの証人キリスト・アデルフィアン派だけです。

 

万人救済説

永遠の地獄の存在を否定し、万人が天国に行くと主張するグループもあります。

 

最後に

キリスト教の地獄に対する印象は”残酷性に欠ける”の一言に尽きます。

仏教・イスラム教と同様に地獄は炎に纏わる場所とされていますが、前者二宗教と違って苦しみや焼かれ方の具体性に関してあまり触れられていません(私の調査能力不足だったらスイマセン)。

そもそも地獄の有無から議論する辺り、キリスト教がいかに”解釈と議論”を重視していることが伺えますね。

 

イスラム教における地獄について調べてみた

先日は仏教における地獄についてお話しました。

実はイスラム教の地獄も、仏教の地獄のように様々なブロックがあるのです。

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イスラム教における地獄と最後の審判

世界の終末に際しての審判において、善行の重い者は天国に送られる一方で、不信心者や悪事を成した者は地獄に送られます。

地獄には7つの門があり、各々の門には罪人の一段が割り当てられるとします(コーラン15章43-44節)。

 

イスラム教における地獄と7つの門

ムハンマド天使ガブリエルに「地獄の門は、我々の世界の門に似ているのでしょうか」と尋ねた時、ガブリエルは次のように答えたと言います。

「それらの門は開いていて、一つの門の下にもう一つの門があり、さらにその下にもう一つの門があるというように、階層構造をなしている

また距離や熱に関して「一つの門から、その下の門までの距離は、歩いて700年かかる。一つ下の門に行くごとに、熱は70倍増加する」と述べました。

 

イスラム教における地獄と最下層”ハーウィア”

最下層のハーウィアには偽善者たち食卓の人々の中で不信仰者となった者、モーゼ達を迫害したファラオの一党がいるとされています。

意味は「奈落」

食卓の人々の中で不信仰者となった者

コーランの第五章に「食卓章」といものがあります。

これには、エスの弟子たちが、エスに向かって天から食卓が下るように求めたところ、豪華な食事がのった食卓が40日間毎日天から下り1300人もの人々がこの食事をとったという奇蹟について記されています。

食卓を下す前、神は「本当にわれは、それ(食卓)をあなたがたに下すであろう。それで今後もしあなたがたの中で不信仰者となる者があれば、われは世の誰にもまだ加えなかった懲罰で、彼を罰するであろう」と警告しています。

この節に基づいて、食卓の奇蹟を目撃しながら不信仰に陥った人々は地獄の最下層に置かれたと考えられています。*1

 

イスラム教における地獄と第二の門”ジャヒーム”

ジャヒームには多神教がいるとされています。

意味は「竈」

 

イスラム教における地獄と第三の門”サカル”

サカルには悪魔と、悪魔に従った人々、そしてゾロアスター教徒がいると言われています。

 

イスラム教における地獄と第四の門”イサール”

イサールにはサービア教コーランの中でユダヤ教キリスト教と並んで一神教と認められている宗教)の信徒がいるとされています。

意味は「燃え上がる炎」。

 

イスラム教における地獄と第五の門”フタマ”

フタマにはユダヤ教徒がいると言われています。

意味は「砕く火」

 

イスラム教における地獄と第六の門”ラザー”

ラザーにはキリスト教徒がいるとされています。

意味は「燃える火」。

 

イスラム教における地獄と第七の門”ジャハンナム”

ガブリエルは「第七の門には、あなたの共同体の中で、大罪を犯したのに悔悟しないまま死んだ人々がいます」と説明しました。

つまりイスラム教徒の罪人が居るとされています。

ちなみにこれを聞いたムハンマドは気を失ったとされます。

意味は「火地獄」

 

イスラム教における地獄と動植物

地獄にはサソリがいるとされています。

地獄の蛇はラクダの首ほどの太さがあり、サソリもラバの大きさを持つとされ、一度噛まれたらその毒で40年苦しくと言います。

また、地獄にはザックームという植物があります(37章63-67節)。ザックームを食べれば胃袋の中で沸騰するとされ、また苦さは、樹液を一滴でも世界の海に混入したならば世界の全住民を滅ぼしてしまう程です。

 

イスラム教における地獄と看守

地獄にはサバーニーヤという19人の天使が管理者として存在します。

地獄の業火にあえぐ罪人たちを責め苛むことを仕事とし、彼らに慈悲を乞うても、決して許されることはありません。

サバーニーヤの長はマーリクという天使で、最高管理者でもあるので「火の天使」とも呼ばれています。

 

イスラム教における地獄と救い

「罪を犯した者は地獄の懲罰の中に永遠に住む」コーラン(43章74節)にあります。故に地獄の懲罰は永遠に続くとされます。

しかし、アッラーの他に神はなく、ムハンマドは神の預言者である」と唱えたことのあるすべての者は、地獄から救い出され天国に入ると説きます。

 

最後に

驚くべきことに、宗教によって階層が異なるイスラム教の地獄。しかも、最後は救われると書きましたが、それはアッラーを信仰する者だけです。つまりハーウィアの不信仰者は最後まで救われないのです。

異教徒に対する態度と共同体に対する態度が、まさに天と地ほどの差がありますね。

仏教における地獄を調べてみたpart5

地獄のも残すところ1つとなりました。

最下層の無間地獄です。無間という名に相応しく、この地獄は縦横それぞれ8万由旬あるとされています。

広大な敷地面積には、様々な”設定”が生息しています。

見ていきましょう。

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仏教における地獄と無間地獄

殺生・盗み・邪淫・飲酒・妄語・邪見・犯持戒に加えて、「父母殺害」「阿羅漢(小乗仏教における聖者)殺害」など、仏教における最も重い罪を犯した者が落とされます。

地獄の最下層に位置します。

最下層ゆえ、この地獄に到達するには、真っ逆さまに(自由落下速度で)落ち続けて2000年かかると言います。

無間地獄の苦痛は大阿鼻地獄の苦の1000倍もあると言われ、7つの地獄でさえ、無間地獄に比べれば夢のような幸福であるといわれています。

烏口処

阿羅漢(小乗仏教の最高指導者)を殺した者が落ちます。

獄卒が罪人の口を裂いて閉じないようにした上、沸騰する泥の河に落とします。溺れた罪人は泥の熱で内臓まで焼かれます

一切向地処

とりわけ尊い尼僧や阿羅漢を強姦した者が落ちます。

頭を上にしたり下にしたり、くるくる回転させられながら、炎で焼かれ、また灰汁の中で煮られます。

無彼岸常受苦悩処

自分の母親を犯した者が落ちます。

鉄のかぎでへそから魂を取り出され、その魂に鋭い棘を刺されます。そのあとへそに鉄の釘を打たれ、口に高熱の鉄を注がれます

野干吼処

優れた智者、悟りに達した者、阿羅漢、などをそしった者が落ちます。

野干とはジャッカルないし狐のことで、鉄の口を持つ火を吐く狐が罪人に群がり、手、足、舌など罪のある部分を次々に食いちぎります

鉄野干食処

仏像、僧房など僧侶の身の回りの品を焼き払った罪人が落ちます。

身体から火が吹き出し、空から鉄の瓦が雨霰と降り注ぎます。鉄の狐が罪人を喰います。

黒肚処

仏に属する物品を喰ったり自分のものとした者が落ちます。

罪人たちは餓鬼道さながらに飢え渇きに苦しみ、ついには自分の肉まで喰ってしまいます。さらに、黒い腹の蛇が罪人を足の甲から喰います

無論、喰われた部分は何度でも再生します。

身洋処

仏に捧げられた財物を盗んだ者が落ちる。

燃え上がる二本の巨大な鉄の木の間に地獄があり、風で鉄の木が揺れて擦れ合うたびに、間にいる罪人たちを粉々にします

その肉片は金剛のくちばしの鳥に喰われます

夢見畏処

僧侶達の食料を奪い、飢えさせた者が落ちます。

鉄の箱の中に座らされ、杵でつかれて肉の塊にされます

身洋受苦処

篤志家が出家者や病人に布施した財物を僧侶を装って奪い取った者が落ちます(篤志家とは社会奉仕・慈善事業などを熱心に実行・支援する人)。

高さ100由旬の燃える鉄の木の下にある地獄で、この世の全ての病が罪人を苦しめます

雨山聚処

辟支仏(菩薩より価値が低い仏)の食物を奪って喰った者が落ちます。

巨大な鉄の山に何度も押しつぶされます。勿論、潰されたらすぐまた生き返るので、同じ苦しみが続きます。

また、獄卒に身体を引き裂かれ傷口に高熱の液体を注がれます

加えて、人間界にある全ての病が罪人を苦しめます

閻婆叵度処

田畑の水や飲み水の水源である河などを破壊し、人々を渇死させた者が落ちます。

象の様に巨大で火を吐く閻婆(閻婆度)という鳥が、罪人をくわえて高空から落とします

地面には無数の鋭い刃が出ており、炎の歯を持つ犬に噛まれます

星鬘処

修行によって飢えている僧侶から食料を奪った者が落ちます。

正方形の地獄で、二つの角に大きな苦しみがあります(一方では釜の中で回転させられながら煮られ、もう一方では剣が混ざった激しい風にずたずたにされた後、釜の中で溶けた銅で煮られます)。

苦悩急処

仏教の説を伝えるための書や絵画などを歪めたり破損したりいたずらしたりした者が落ちます。

獄卒が罪人の両目に溶けた銅を流し込み、その両目を熱砂ですり減らし、さらに身体の他の部分も同様にすり減らします

臭気覆処

僧達の田畑や果樹園、その他彼らに帰属すべき物を焼いた者が落ちます。

無数の針が生えた燃え上がる網に捕らえられ、体中刺し貫かれながら燃やされます。その後、矢で射られた後、サトウキビで叩かれます。

鉄鍱処

食料などが不足する貧しい時代に僧侶達の面倒を見ると言っておきながら、何もせずに飢えさせた者が落ちます。

数多くの炎に取り囲まれ、餓鬼のごとく飢渇の苦しみを与えられます

十一焔処

仏像、仏塔、寺舎などを破壊したり燃やしたりした者が落ちます。

獄卒たちが鉄棒を持って追いかけ、罪人たちは蛇に噛まれたり炎に焦がされながら逃げ続けます

火車地獄

観仏三昧海経に伝わっている小地獄です。

対象は不明

乗り物の方の”火車”で罪人が連れてこられ、巨大な炎の車輪に縛りつけられて燃やされます

鑊湯地獄

経律異相には鑊湯地獄の存在が説かれており、現世で罪を犯した人間が釜茹でされると説きます

詳細は不明。

鉄刺林地獄

鉄の棘が生えた木の生える林の地獄

大智度論」ではそれぞれの八大地獄の十六小地獄のひとつとされ、邪淫を犯した者が落ちると言います。

「大毘婆沙論」では四小地獄の鋒刃増の一つとして現れます。

 

仏教における地獄と灰河地獄

偽経の「善悪因果経」には灰河地獄が紹介されています(偽経とは、西域や中国・日本などで俗信や正統仏教とは別の思想を取り入れて偽作された経典)。

鶏の子を焼き煮た者が落ちるとされます。

熱い灰が川のように流れていると言われています。

日本霊異記今昔物語集『往生要集』にも登場します。しかし仏教学者の石田瑞麿はあくまで八熱地獄に該当するものではないと推測しています。

 

仏教における地獄と長阿含経

原始仏教の経典である阿含経では、地獄は、八熱地獄十地獄に大別され、八熱地獄に付随する小地獄は全て共通の十六種類であるとされます。

八熱地獄

現在と異なり、八熱地獄は階層構造ではなく、十地獄ともども世界をぐるりと取り囲む形で配置されています。

その名は第一地獄から順に、想地獄、黒縄地獄、堆圧地獄、 叫喚地獄大叫喚地獄、 焼炙地獄、大焼炙地獄、無間地獄となっています。

想地獄は現在の等活地獄焼炙・大焼炙地獄は焦熱・大焦熱地獄に対応していると考えられていますが、具体的な内容は不明。

小地獄

八熱地獄に付随する小地獄もまた、現在の説と異なり全ての地獄で共通の十六種類が付きます。

それぞれ黒沙、沸屎、五百釘、飢、渇、一銅釜、多銅釜、石磨、膿血、量火、灰河、鉄丸、釿斧、犲狼、剣樹、寒氷と言います。

具体的な内容は不明。

十地獄

また別に十地獄が存在します。

それぞれ厚雲、無雲、呵呵、奈呵、羊鳴、須乾提、憂鉢羅、拘物頭、分陀利、鉢頭摩と言います。

罪の軽重などの落ちる条件、地獄の内容など、具体的な事は不明

 

仏教における地獄と八寒地獄

倶舎論正法念処経では、八熱地獄の周囲ないし横に八寒地獄があるとされています。

八寒地獄にもそれぞれ十六小地獄があると言われているが、具体的な内容は伝わっていません

頞部陀地獄

八寒地獄の第一。

寒さのあまり鳥肌が立ち、身体にあばた(痘痕)を生じます

尼剌部陀地獄

八寒地獄の第二。

鳥肌が潰れ、全身にあかぎれが生じます

頞哳吒地獄

八寒地獄の第三。

寒さによって「あたた」という悲鳴を生じるのが、名前の由来。

臛臛婆地獄

八寒地獄の第四。

寒さのあまり舌がもつれて動かず「ははば」という声しか出ないとされます。

虎虎婆地獄

八寒地獄の第五。

寒さのあまり口が開かず「ふふば」という声しか出ないとされています。

嗢鉢羅地獄

八寒地獄の第六。

嗢鉢羅は「青い睡蓮」を意味するサンスクリットの音写です。

全身が凍傷のためにひび割れ、青い蓮のようにめくれ上がる事から「青蓮地獄」とも呼ばれます。

鉢特摩地獄

意訳で「紅蓮地獄」とも呼ばれる八寒地獄の第七。

鉢特摩は「蓮華」を意味するサンスクリット の音写です。

ここに落ちた者は酷い寒さにより皮膚が裂けて流血し、紅色の蓮の花に似るといいます。

摩訶鉢特摩地獄

意訳で「大紅蓮地獄」とも呼ばれる八寒地獄の第八。

八寒地獄で最も広大とされています。

摩訶は「大」を意味するサンスクリットの音写です。

ここに落ちた者は、紅蓮地獄を超える寒さにより体が折れ裂けて流血し、紅色の蓮の花に似るといいます。

 

最後に

いかがだったでしょうか?

無間地獄は比類なき苦しみを与えられる地獄だけあって、かなりシンプルな内容が多く見受けられますね。

一方で、八熱地獄のお隣さんである八寒地獄は不明点が多く、いまいちイメージも出来ません。八熱地獄の設定を考えて燃え尽きてしまったのでしょうか。八熱地獄だけに。

ともあれ、下手な怪談よりも身の毛がよだつ地獄の面々に、少し肝が冷えた夏の日でした。八寒地獄だけに。

仏教における地獄を調べてみたpart4

仏教における地獄を調べてみたシリーズもpart4に差し掛かりました。

これは地獄の道のりは長く、地獄の部署は多い証です。また、罪にあった罰を用意してくれている”地獄のおもてなし精神”の現れでもあります。

日本は地獄に至るまで奥ゆかしいのですね。

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仏教における地獄と焦熱地獄

殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄語に加え、邪見(仏教の教えとは相容れない考えを説き、また実践する)の罪を犯した者が堕ちる地獄です。

大叫喚地獄の下に位置します。

常に極熱で焼かれ焦げています。この焦熱地獄の炎に比べれば、それまでの地獄の炎は雪のように冷たく感じられるほどであり、豆粒ほどの焦熱地獄の火を地上に持って来ただけでも地上の全てが一瞬で焼き尽くされるといいます。

大焼処

「殺生をすることで天に転生することができる」という邪見を述べた者が落ちます。

もろもろの火の他に、文字通り「後悔の炎」が生じて内側から罪人を焼き焦がします

分荼梨迦処

「飢えて死ぬことで天に昇ることができる」と説いた者が落ちます。

体中から炎が吹き出して苦しんでいる罪人の耳に、「ここには分荼梨迦の池があり、水が飲める」という声が聞こえます。その声に従って池に飛び込むとそこは水ではなく炎の中で、さらに苦しむ羽目になります。

龍旋処

「欲、怒り、愚かさを断てば涅槃に入れる、という教えは嘘だ」と説いた者、礼儀作法の意味を解さなかった者が落ちます。

身体から毒を発する悪龍がたくさんおり、罪人の周囲で激しく回転します。罪人は毒と回転の摩擦でぼろぼろに砕かれます

赤銅弥泥魚旋処

「この世に存在する一切は大自在天の作ったもので、輪廻転生などはない」と説いた者が落ちます。

高熱の銅汁の海に鉄のがおり、溺れる罪人の上半身を噛みます下半身は銅の海で焼かれ、また海中の悪虫に食いつかれます。

鉄鑊処

「たとえ殺人を犯しても、もしもその殺された人が天に生まれ変われるなら殺人は悪くない」と説いた者が落ちます。

「平等受苦無力無救」「火常熱沸」「鋸葉水生」「極利刀鬘」「極熱沸水」「多饒悪蛇」という六つの巨大な釜があり、罪人を煮ます。

血河漂処

何度となく戒に違反しながら「苦行すれば全ての罪は許されるのだからかまわない」と考え、自らの身体を傷つけるような苦行を行った者が落ちます。

文字通り血の河に漂う地獄で、河の中に群れ成して住む丸虫が罪人に取り付いて焼き焦がします

饒骨髄虫処

今よりもよい世界ではなく、当たり前の人間界に転生することを望んで戒を破り、牛の糞に火をつけて自らの身を焼いた者が落ちます。

鉄の杵で打たれて蜜蝋のようにどろどろにされ、前世の罪のために虫となって地獄に落ちた者たちと混ぜ合わされて肉の山となり、火をつけて燃やされます

一切人熟処

邪教を信じ、天界に転生するために山林や草むらなどに放火した者が落ちます。

罪人の目の前で家族や友人など、かけがえのない人々が焼かれる姿を見せ、精神的な責め苦を与えます。

無終没入処

「動物や人間を焼き殺したものは火を喜ばせたという理由で幸福を得られる」と考え、実行した者が落ちます。

燃え盛る巨大な山に登らされ、手、足、頭、腰、眼、脳などに分解されてそれぞれが燃やされます

大鉢特摩処

僧たちに食事を供する大斎の期間中に殺人をすれば望みが叶うと考え、実行した者が落ちます。

花弁の中に無数の長い棘がある紅蓮華の花の中に落とされ、全身串刺しになります。しかも傷口から炎が吹き出します。

悪険岸処

「水死したものは那羅延天に転生し、永遠にその世界に住み続ける」と説いた者が落ちます。

獄卒たちが「あの大きな山を越えれば苦を受けることはなくなる」と言うのでその通りにすると、山の向こうの切り立った崖に落ち、崖下の石の刀に刺さって燃やされます

金剛骨処

「この世にある一切のものは因縁などとは関係なく生じたり滅したりするので、仏法を信じるなどばからしい」と説いた者が落ちます。

獄卒に刀で肉を削られ骨だけにされるが、この骨は金剛のように硬くなっています。すると、罪人に騙されたものたちが現れてその骨を手に取り打ち合わせます。勿論、骨だけになっても罪人は苦痛を感じます。

黒鉄縄𢶏刀解受苦処

「人間の行いの善や悪などはすべて因縁によって決まっており、変えられないのだから、あれこれ頑張ってみても無意味だ」と説いた者が落ちます。

鉄の綱で縛られ、足から頭にかけて刀で細かく裂かれます

那迦虫柱悪火受苦処

「宇宙にはこの世もあの世も存在しない」と説いた者が落ちます。

罪人の頭を貫通させた大きな釘を、そのまま地面に打ち立てます。その後罪人の体内に虫が湧き出し、血を吸い尽くした後に肉まで食べます

闇火風処

「この世の法則には無常ばかりではなく一定不変なものもある」と説いた者が落ちます。

悪風に吹き飛ばされた罪人の身体が風の渦の中で回転し続けます。時折別の強風が吹くと身体が砕かれて砂のようになるが、すぐ再生して同じことのくり返しになります。

金剛嘴蜂処

「人間の世界は因縁によって生じたので、全ては因縁によって決定されている」と説いた者が落ちます。

極卒がはさみで罪人の肉を少しずつちぎり取り、さらにそれを自分自身に喰わせます。

分荼離迦

『往生要集』に現れれますが、詳細は不明。

 

仏教における地獄と大焦熱地獄

殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄語、邪見に加えて、童女や尼僧など清く聖なる者を犯した「犯持戒人」の罪が加わった者が落とされます。

焦熱地獄の下に位置します。

極熱で焼かれて焦げます。その炎は最大で高さ500由旬、横幅200由旬あるといいます。

罪人の苦しみの声は地獄から3000由旬離れた場所でも聞こえます

この地獄に落ちる罪人は、死の三日前から中有(転生待ち)の段階にも地獄と同じ苦しみを受けます

一切方焦熱処

仏教の在家の女性信者を犯した者が落ちます。

全ての場所、空にまで炎が満ちており、罪人たちは常に焼かれます。

また、獄卒が罪人を巻物のように足から巻いていき、全身の血が頭部に集まったところで釘を打ちつけます。

大身悪吼可畏之処

出家はしたがまだ僧にはなっていない女性を犯した者が落ちます。

獄卒が毛抜きはさみで、全身の毛を肉もろとも一本ずつ抜いて苦しめます。

火髻処

仏法を正しく身に付けて正しく行っている女性を犯した者が落ちます。

弓の弦のように細長い体に、鋭い牙を持った虫がたくさんおり、獄卒に縛られた罪人の肛門から侵入、内臓から脳まで食い尽くして頭部を食い破り外に出でます

雨縷鬘抖擻処

国家の危機的状況の混乱に乗じて、戒律を守っている尼僧を犯した者が落ちます。

回転する刀があちこちに生えており、身動きするとたちまち切り裂かれます。勿論、死ぬとすぐ再生し、また切られて死にます。

吒々々嚌処

(不淫戒を)受戒した正行の女性と性行為を行った者が落ちます。

激しい風に吹き上げられてバラバラになり、肉があちこちに撒き散らされます

また、金剛の鼠に喰い散らかされ、芥子粒のように細かくなります。

雨沙火処

仏門に入ったばかりの尼僧を犯した者が落ちます。

500由旬の大火炎の底に金剛の砂の巨大な蟻地獄があり、灼熱の砂に飲み込まれます。砂の中には鋭く尖って突き刺さるものも混ざっています。

内熱沸処

三宝に帰依し、五戒を受けた女性に対して非法な事を行った者が落ちます。

あたりが炎に包まれている中で、五つの火山だけが木が茂り池を持ちます。それを見て火山に行くと暴風に巻き上げられ、火山内部で焼き尽くされます

普受一切資生苦悩処

僧侶でありながら、戒を受けた女性を酒で酔わせてたぶらかし、道心を破壊し終わったあとで、財物を与えて性行為を行った者が落ちます。

炎の刀が皮膚をはぎ、肉がむき出しになった所をさらに炎で焼きます。また、獄卒が溶けた鉄を身体に注ぎ込みます。

鞞多羅尼処

嫌がる女性と無理矢理に関係した者が落ちます。

暗黒の中で高熱の鉄の杖が雨のように降り、罪人に次々と突き刺さります。

無間闇処

善を治めた人物を女性に誘惑させて堕落させた者が落ちます。

金剛さえ突き破るほど鋭い嘴を持った虫が、文字通り罪人の骨の髄まで食い荒らします

苦髻処

自分と関係しなければ王に讒言して罰を受けさせると脅迫し、立派な僧を誘惑して堕落させた女性が落ちます。

獄卒に鉄のヤスリで肉を削り落とされます

髪愧烏処

酒に酔って姉妹を犯した者が落ちます。

灼熱の炉に入れられ、獄卒がふいごで火力を強めます。

また、太鼓の中に入れられ、獄卒がそれを激しく打ち鳴らします。

悲苦吼処

特別な儀式の最中であるにも関わらず、姉妹と関係を持った者が落ちます。

一見すると平和そうな林があり、みんなそこに逃れるが、実はそこには巨大な千の頭の竜がたくさんいて、罪人を口の中で噛み砕きます

罪人は口の中で生き返り、また噛み砕かれ、同じことのくり返しになります。

大悲処

教典などを学んでいる善人の妻や娘などをだまして犯した者が落ちます。

びっしりと刀が生えたヤスリのような床があり、獄卒にそこにこすり付けられ、形がなくなるまで擦り減らされます

無非闇処

自分の子の妻を犯した者が落ちます。

沸騰する釜の中で他の罪人共々煮られた後、杵でつかれて一塊の団子にされます。

木転処

命を救ってくれた恩人の妻を犯した者が落ちます。

沸騰した河の中で逆さに煮られ、巨大な魚に喰われます

 

最後に

いかがだったでしょうか?

焦熱地獄大焦熱地獄に送られる罪人はかなり限定的であると印象を受けました。”「動物や人間を焼き殺したものは火を喜ばせたという理由で幸福を得られる」と考え実行した者”なんて確実に誰かを思い浮かべて決めたに違いありません。

地獄の内容を知らせるということは一種の戒め・忠告になります。もしかしたら地獄が成立した時代、このような迷信が広まっていたのかもしれません。

地獄は想像力豊かな世界です。受け止める側である我々も想像力を豊かにして読み解くべきでしょう。

仏教における地獄を調べてみたpart3

連日、地獄巡りのように地獄を紹介しています。

今日は、殺生、盗み、邪淫に加え、飲酒と妄語の罪を犯した者が堕ちる地獄「叫喚地獄」「大叫喚地獄」をご紹介させていただきます。

早速見ていきましょう。

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仏教における地獄と叫喚地獄

殺生・盗み・邪淫に加えて、酒に関係する悪事を犯した「飲酒」の罪を犯した者が落とされる地獄。

もっとも、ただ酒を飲んだり売買した者は、この地獄には堕ちません。酒に毒を入れて人殺しをしたり、他人に酒を飲ませて悪事を働くように仕向けたりすることなどが叫喚地獄に堕ちる条件になります。

衆合地獄の下に位置します。

罪人は熱湯の大釜や猛火の鉄室に入れられ、号泣、叫喚します。その泣き喚き、許しを請い哀願する声を聞いた獄卒はさらに怒り狂い、罪人をますます責め苛みます

また、頭が金色、目から火を噴かせる赤い服を着た巨大な獄卒が罪人を追い回して弓矢で射ります。他にも、罪人は焼けた鉄の地面を走らされ、鉄の棒で打ち砕かれます

大吼処

心身を清める斎戒を行っている人に酒を与えた者が落ちます。

人に酒を飲ませたように溶けた白蝋を無理矢理飲ませられます

苦痛のあまり罪人が空まで届く咆吼の叫び声をあげると、獄卒はますますいきり立ち、罪人を苦しめます

普声処

修行中に気が緩んで酒を飲んだ者、自ら飲酒を楽しむばかりか、受戒したばかりの人に酒を飲ませた者が落ちます。

獄卒に鉄の杵で打たれて苦しめられ、その叫び声が地獄を通り越して鉄囲山世界全てに響き渡ります。

髪火流処

五戒を守っている人に酒を与えて戒を破らせた者が落ちます。

熱鉄の犬が罪人の足に噛み付き、鉄のくちばしを持った鷲が頭蓋骨に穴を開けて脳髄を飲み、狐たちが内臓を食い尽くします。

火末虫処

水で薄めた酒を売って大儲けした者たちが落ちます。

地・水・火・風の四大元素から来る四百四病の全てが存在します(それぞれが、地上の人間を死滅させる威力を持ちます)。

また、罪人の身体から無数の虫が湧き出し肉や骨を食い破る

熱鉄火杵処

鳥や獣に酒を与えて、酔わせた後に捕らえて殺した者が落ちます。

獄卒が振り下ろす鉄の杵で追い回され、捕まると砂のごとく細かく砕かれます。肉体が再生しても今度は刀で少しずつ削られ、細かい肉片にされます。

雨炎火石処

旅人に酒を飲ませ酔わせて財産を奪った者、象に酒を飲ませて暴れさせ、多くの人々を殺した者などが落ちます。

赤く焼けて炎を発する石の雨が罪人たちを撃ち殺します。また、溶けた銅とハンダと血が混ざった河が流れており、罪人たちを押し流しながら焼きます。

他にも、全身から炎を発して燃え盛る巨大象がいて罪人を押し潰します

殺殺処

貞淑な婦人に酒を飲ませて酔わせて関係した者が落ちます。

獄卒たちが熱鉄の鉤で罪人の男根を引き抜きます。抜かれるたびに再生し、同じことが繰り返されます。

罪人が逃げ出すと、今度は烏、鷲、鳶の大群に食い尽くされます

鉄林曠野処

酒に毒薬を混ぜて人に与えた者が落ちます。

燃え盛る鉄の車輪に縛り付けられ、回転させたところを的当ての如く弓で射られます

普闇処

酒を売る仕事をしながら、人の無知に付け込んで、少しの酒を高価な値段で売った者が落ちます。

真っ暗闇の中で獄卒に散々に打たれ、その後炎の中で頭から二つに引き裂かれます

閻魔羅遮曠野処

病人や妊婦に酒を与えて、彼らの財産や飲食物を奪った者が落ちます。

罪人は足から順に頭まで燃えていき、その上で獄卒に鉄刀で足から順に頭まで切り刺されます

剣林処

荒野を旅する人をだまして泥酔させ、持ち物や命を奪った者が落ちます。

燃え盛る石の雨、沸騰した血と銅汁と白蝋の河がある中で、獄卒に刀や殻竿で打たれます

地獄の広さは500由旬とされ、暴風によって剣になっている木の葉が飛び、罪人の手足・体を切り裂きます

大剣林処

人里離れた荒野の街道で酒を売った者が落ちます。

高さ1由旬の剣樹の林があり、獄卒にそこへ追い立てられます。

剣樹の幹は炎に包まれ、葉は鋭い刃になっており、揺れるたびに無数に落下して下のものを切り裂きます。逃げ出したくても外には常に獄卒がいます。

芭蕉烟林処

貞淑な婦人に密かに酒を飲ませていたずらしようとした者が落ちます。

煙が充満していて前が見えず、床は熱した鉄板になっていて焼かれます

煙火林処

悪人に酒を与えて、憎む相手に復讐させた者が落ちます。

熱風に吹き上げられ、他の罪人と空中でぶつかり合いながら砂のように砕けてしまいます

火雲霧処

他人に酒を飲ませて酔わせ、物笑いにした者たちが落ちます。

地面から100mの高さまで吹き上がる炎の熱風で舞い上げられ、空中で回転し、縄のようにねじれ、ついには消滅してしまいます。

分別苦処

使用人に酒を与えて勇気付け、動物を殺生させた者が落ちます。

獄卒が様々な苦しみを与えた上で、説教して反省させます。その上でまたさらに様々な苦悩を与えます

 

仏教における地獄と大叫喚地獄

叫喚地獄の下に位置します。

対象は殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄語(うそ)に纏わる罪を犯した者。

叫喚地獄で使われる鍋や釜より大きな物が使われ、罪人は更に大きな苦を受け叫び喚きます。

十六小地獄といいつつ、何故かこの大叫喚地獄のみ18種類の名が伝わっています。理由は不明。

吼々処

恩を仇で返した者、自分を信頼してくれる古くからの友人に対して嘘をついた者が落ちます。

獄卒が罪人の顎に穴をあけて舌を引き出し、毒の泥を塗って焼け爛れたところに毒虫がたかります

受苦無有数量処

嘘をでっち上げて、目上の人を陥れた者が落ちます。

獄卒に打たれて傷つくと、その傷口に草を植えられます。成長し根を張ったところで引き抜かれます

受堅苦悩不可忍耐処

王や貴族の部下で、保身のために嘘をついた者、またはその地位を利用して嘘をついた者が落ちます。

罪人たちの体内の蛇が動き回り、肉や内臓を食い荒らします。

随意圧処

他人の田畑を奪い取るために嘘をついた者が落ちます。

さながら鍛冶師が刀を作るときのように、罪人を鉄に見立てて火で焼き、ふいごで火力を強め、鉄槌で打たれ、引き延ばされ、瓶の中の湯で固められ、また火で焼く、ということが延々くり返されます。

一切闇処

婦女を犯して裁判にかけられながら、王の前で嘘をついてしらを切り通し、かえって相手の婦女を犯罪者に仕立て上げた者が落ちます。

頭を裂いて舌を引き出し、それを熱鉄の刀で引き裂き、舌が生えてくるとまた同じ事を繰り返します。

人闇煙処

実際は十分に財産があるのに財産がないと嘘をつき、本当は手に入れる資格がないものを皆と一緒に分け合って手に入れた者が落ちます。

獄卒に細かく身体を裂かれ、生き返るとまだ柔らかいうちにまた裂かれます。

また、骨の中に虫が生じて内側から食われます

如飛虫堕処

穀物であれ衣であれ、僧侶の所有物によって商売を行い、安く買い高く売り、得たものを僧侶と共有せず、「儲けがなかった」と嘘をつく者が落ちます。

獄卒が罪人を斧で切り裂き、秤で計って、群がる犬達に食わせます。

死活等処

出家人(僧侶)でもないのにその格好をし、人をだまして強盗を働いた者が落ちます。

獄卒に苦しめられる罪人たちの前に青蓮華の林が見え、そこに救いを求めて駆け寄りますが、炎の中に飛び込むことになります

また、目や両手足を奪われて抵抗できないまま焼き殺されます

異々転処

優れた陰陽師で正しく占うことができ、世人の信用を得ていながら、占いで嘘をつき、国土や立派な人物を失う原因を作った者が落ちます。

目の前に父母、妻子、親友などの幻が出現するので、救いを求めて駆け寄ると、灼熱の河に落ちて煮られます

再生して河から出ると、再び同様の幻が出現し、駆け寄ると地面の鉄鉤で切り裂かれる。また、上下からの回転ノコギリで切り刻まれます

唐悕望処

病気で苦しんだり、生活に困ったりしている人が助けを求めているのに、助けると口先ばかりで嘘をついて、実際には何もしてやらなかった者が落ちます。

目の前においしそうな料理が出現するので駆け寄ると、途中に生えた鉄鉤で傷つき、しかもたどり着くと実は料理に見えたのは熱鉄や糞尿の池で、その中に落ちて苦しみます

また、夜露をしのぐ家を貸すといって貸さなかった者は、深さ50由旬の瓶の中で高熱の鉄汁に逆さまに浸されるなど、嘘に応じた罰があります。

双逼悩処

村々の会合などで嘘をついた者、悪口を言って集団の和を乱した者が落ちます。

炎の牙の獅子がおり、罪人を口の中で何度も噛んで苦しめます。

迭相圧処

親兄弟親戚縁者などが争っているときに、自分の身近な者が得するように嘘をついた者が落ちます。

罪人に騙されたものたちが出現し、罪人の肉をはさみで切り取って口の中で噛んで苦しめます。ちなみに切り取られた肉片にも感覚があります。

金剛嘴烏処

病気で苦しむ人に薬を与えると言っておきながら与えなかった者が落ちます。

金剛のくちばしを持つカラスが罪人の肉を喰います。喰い尽くされると罪人は復活し、また始めから喰われます。

火鬘処

祝い事の最中に法を犯しておきながら、しらを切った者が落ちます。

獄卒が鉄板と鉄板の間に罪人を挟み、くり返しこすって血と肉の泥にしてしまいます。

受鋒苦処

布施しようと言っておきながら布施をしなかった者、布施の内容にケチをつけた者が落ちます。

獄卒に熱鉄の串で舌と口を刺されます。嘘をつくことはおろか泣き叫ぶこともできません。

受無辺苦処

船長でありながら海賊と結託し、船に乗っている商人達の財産を奪った者が落ちます。

熱鉄の金箸で舌を引き抜かれます。いくら抜いても舌は再生し、そのたびに抜かれます。さらに目を引き抜いたり、刀で肉を削られたりします。

血髄食処

王や領主の地位にあって税物を取り立てておきながら、まだ足りないと嘘をついて多くの税を取り上げた者が落ちます。

黒縄で縛られて木に逆さづりにされた上、金剛のくちばしのカラスに足を食われます。罪人は流れてきた自分の血を飲むことになります。

十一炎処

王、領主、長者のように人から信頼される立場にありながら、情によって偏った判断を下した者が落ちます。

10方向から炎が吹き出して罪人を焼き、罪人の体内から11番目の炎が生じて口から吹き出し舌を焼きます。

 

最後に

いかがだったでしょうか?

「嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれる」という言葉がありますが、まさに大叫喚地獄のことですね。

嘘は口に纏わる罰であるからか、大叫喚地獄では舌を抜かれたり、噛まれたりと、口を使った罰が多く見受けられます。目には目を、口には口を、とでも言いたいのでしょうか?

それにしても、罰を執行する獄卒の仕事はハードな肉体労働ばかりです。罰せられる方も大変ですが、罰する方も大変ですね。

 

仏教における地獄を調べてみたpart2

先日は殺生に関する地獄を見ていきました。

今日は”盗み”と”邪淫”を働いた者が堕ちる地獄を見ていきましょう!

 

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仏教における地獄と黒縄地獄

殺生のうえに盗みを重ねた者がこの地獄に堕ちると説かれています。

等活地獄の下に位置します。

獄卒は罪人を捕らえて、熱く焼けた鉄の地面に伏し倒し、同じく熱く焼けた縄で身体に墨縄をうち、これまた熱く焼けた鉄の斧もしくはノコギリでその跡にそって切り、裂き、削ります

また、左右に大きく鉄の山があり、その山の上に鉄の幢(はたほこ)を立て、鉄の縄をはり、罪人に鉄の山を背負わせて縄の上を渡らせせます。すると罪人は縄から落ちて砕け、あるいは鉄の鼎に突き落とされて煮られます。この苦しみは等活地獄の苦しみの10倍と言われています。

ここにも十六小地獄があるはずですが、「正法念処経」には三種類の名前しか伝わっていません。

等喚受苦処

対象は生前に間違った法を説いた者崖から投身自殺した者

燃える黒縄に縛られて、計り知れないほど高い崖の上から鉄刀が突き出す熱した地面に落とされます。その上で燃える牙を持つ犬に食い殺されます。

黒縄地獄にありながら、落ちる条件は「盗み」ではなく「嘘」や「邪見」にあたるりますが、理由は不明。

旃荼処

対象は病人が用いるべき薬品を病人でもないのに用いた中毒患者

烏、鷺、猪などが罪人の眼球や舌をつついて抜き出し、獄卒たちが杵や大斧で罪人を打ち据えます

畏熟処

対象は貪欲のために人を殺し、飲食物を奪って飢え渇かせた者

畏鷲処とも言います。

鉄の棘が生えた地面を、杖、火炎の鉄刀、弓矢などを持った獄卒に追い回され、休む間もなくいつまでも走らされます。転倒すると金棒で何度も殴られ、水をかけられます。

 

仏教における地獄と衆合地獄

殺生・盗みに加えて淫らな行いを繰り返した者が落ちます( 邪淫は夫、妻で無い者と性行為をする事は勿論、夫や妻でも不適当とされる行為”姦淫”も含まれる)。

堆圧地獄の別名を持ちます。

黒縄地獄の下に位置し、その10倍の苦を受けます。

多くの罪人が、相対する鉄の山が両方から崩れ落ち、圧殺されるなどの苦を受けます。

大量受苦悩処

異常な方法で性行為を行った罪、それを覗き見して真似した罪に対応。

炎の剣で肛門から腰かけて串刺しにされます。

また男は睾丸、女は卵巣を抜かれる。

割刳処

口を使い、性行為した罪に対応。

口に釘を打って頭から貫通させ、それを急に抜き取り、今度は口から耳へ貫いて抜き取り・・・これら一連の罰を連続で行い苦しめます。

また、溶けた赤銅を口から注ぎ込んで内臓を焼きます

脈脈断処

男性に淫らな性行為を迫った女性の罪に対応。

ここでも、筒を通して口の中に溶けた銅を流さますが、割刳処と違い「私は今、孤独です」と大声で叫ぶようにうながされます

悪見処

他人の子供に性的虐待を行った罪に対応

自分自身の子供が陰部から串刺しになる様子を見せられます。

また己の肛門から熱した銅が注がれ内臓が焼き爛れる苦しみを受けます。

団処

牛や馬を相手に性行為(獣姦)を行った罪に対応

地獄に牛や馬がおり、罪人が生前と同じように性行為を行おうとすると、その牛馬の体内の炎が性器を通じて罪人の体を焼きつくします

忍苦処

戦争などで手に入れた他人の妻を寝取ったり、それを他人に与えた者が落ちます。

獄卒たちが罪人を木から逆さ吊りにし、下からの炎で焼き殺すことを繰り返します。これにより息をすると肺まで燃え上がります。

朱誅処

羊やロバを相手に性行為を行ったうえ、仏を敬わなかった者が落ちます。

鉄の蟻の大群にたかられ、肉や骨、内臓まで喰われます

何何奚処

兄弟、姉妹を相手に性行為を行った者が落ちます。

燃え上がる炎に焼かれ、鉄の烏の大群に食い尽くされます。その苦痛の叫び声は5000由旬にわたって響くとされています。

更にここに落ちるべき罪人には転生前の中有の段階でその声が聞こえるのですが、善悪が倒錯した罪人にはそれが喜びの声に聞こえてしまい、その地獄に行きたいと願ってしまうと言います。

涙火出処

禁を犯した尼僧と性行為を行った者が落ちます。

その名の通りに罪人が流した涙が炎となって当人を焼きます

加えて、獄卒に毒樹のトゲを目に刺され、鉄のはさみで肛門を裂かれ、そこに溶けた白蝋を流し込まれます

一切根滅処

口であれ、肛門であれ、女性器でない場所を使ってその女性と性行為を行った者が落ちます。

獄卒が罪人の口を鉄叉で広げて熱銅を流し込み、耳に白蝋を流し込みます。

鉄の蟻が罪人の目を喰い、刀の雨が降ると言います。

無彼岸受苦処

妻以外の女性と性行為を行った者が落ちます。

火責め、刀責め、熱灰責め、病苦による責めなど、次から次へと責め苦がやってきます。

鉢頭摩処

僧となりながら俗人だったときに付き合っていた女性を忘れられず、夢の中で関係し、さらに人々に淫欲の功徳を説いた者が落ちます。

鉢頭摩とは紅蓮華のことで、あたり一面その赤色をしています。

獄卒に瓶の中で煮られ、鉄杵で突かれます。苦しむ罪人が辺りを見回すと、池の中に蓮華が見えます。そこに行けば救われると思って走り出すと、地面に敷き詰められた鉄鉤に足を引き裂かれ、やっとの思いでたどりつくと背後に控えた獄卒に刀や斧で散々に打たれます

大鉢頭摩処

出家僧ではないのに僧であると偽り、しかも戒律に従わなかった者が落ちます。

広さ500由旬、長さ100由旬の熱した白蝋の河があり、罪人がそこに落ちると身体がバラバラ、骨は石に、肉は泥になってしまいます

やがて、身体が魚になりますが、鳥についばまれます。

火盆処

出家僧ではないのに僧のフリをして、そのうえで女性に興味を持ったり、身の回りの生活品に執着し、正しい法を行わなかった者が落ちます。

正法念処経によると、炎で満たされていることからこの名があると言います。

ロウソクのように、罪人たち自身の身体が炎に包まれ燃え盛り、泣き叫ぶたびに口や目鼻から炎が体内に入り、骨まで燃やし尽くします

鉄末火処

出家僧だと詐称し、そのフリをしたまま、女性の舞いや笑い声、装飾品に心引かれてみだらな想像にふけった者が落ちます。

500由旬の高さの熱鉄の壁の囲いの中で、炎の熱鉄の雨が降りそそぎ焼かれ続けます

 

最後に

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引用:鬼灯の冷徹OP

いかがだったでしょうか?

等活地獄は名前だけ登場しながらも詳細は語られない小地獄はありましたが、黒縄地獄には名前すら登場しない小地獄が13か所もあります。そのお陰で、地獄社会の金字塔である”鬼灯の冷徹”の一期OPにも不明の文字がズラリ(上図)。

想像力切れを起こしたのでしょうか?

仏教における地獄を調べてみた

お盆と言えば地獄の蓋が開く日でもあります。

 

地獄と言えば六道の最下位であり、五悪趣の1つでもあります。

普段はあまり意識のしたくない世界ですが、せっかく地獄の蓋が開いたのですから、たまには覗いてみたいと思います。

 

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仏教における地獄と裁判

日本の仏教では死後、人間は三途の川を渡り、7日ごとに閻魔をはじめとする十王の7回の裁きを受け、最終的に最も罪の重い者は地獄に堕とされるとされます。

 

仏教における地獄と官僚制度

地獄は閻魔大王を頂点とする官僚制度とされています。

これは、元々は閻魔大王、牛頭、馬頭などの古代インドの民間信仰である死後の世界の思想が、中国に伝播して道教などと混交して、仏教伝来の際に日本に伝えられたと考えられています。

 

仏教における地獄と種類

地獄の最下層には無間地獄があり、その上に大焦熱・焦熱・大叫喚・叫喚・衆合・黒縄・等活の7つの地獄が重層しています。

これらを総称して八大地獄と言います。

これらの地獄にはそれぞれ性質があり、そこにいる衆生の寿命もまた異なるとされます。

八大地獄の四面には4門があり、門外に各4つの小地獄があります。これを合して十六遊増地獄と言います。

八熱地獄と合せば百三十六地獄となります。

また八熱地獄の横に八寒地獄があるとされています。

 

仏教における地獄と等活地獄

別名、想地獄。

いたずらに生き物の命を断つ者がこの地獄に堕ち、ケラ・アリ・蚊・蝱(アブ)の小虫を殺した者も、懺悔しなければ必ずこの地獄に堕ちると説かれています。

生前争いが好きだった者や、反乱で死んだ者もここに落ちると言われています。

この中の衆人たちは互いに害心を抱き、自らの身に備わった鉄の爪や刀剣などで殺し合うと言います。そうでない者も、獄卒に身体を切り裂かれ、粉砕され、死ぬが、涼風が吹いて、また獄卒の「活きよ、活きよ」の声で等しく元の身体に生き返る、という責め苦が繰り返されます。故に、等活と言います。

他の地獄同様、周囲には十六小地獄があります。

屎泥処

対象は鳥や鹿を殺した者

屎とは糞、大便のことで、ここでは沸騰した銅と糞尿が沼のようにたまっており、亡者達はその中で苦い屎を食わされ、金剛の嘴を持つ虫に体を食い破られます。

刀輪処

対象は刀を使って殺生をした者

10由旬の鉄の壁に囲まれており、地上からは猛火、天井から熱鉄の雨が亡者を襲います(1由旬は約11.3kmから14.5km前後)。

また、樹木から刀の生えた刀林処があり、両刃の剣が雨のように降り注ぎます。

瓮熟処

対象は動物達を殺して食べた者

獄卒が罪人を鉄の瓮(かめ)に入れて煮ます。

多苦処

対象は人を縄で縛ったり、杖で打ったり、断崖絶壁から突き落としたり、子供を恐れさせたり、拷問で人々に大きな苦痛を与えた者

その名の通り多い苦しみ、十千億種類の苦しみが用意されており、生前の悪行に応じた形で苦しめます。

闇冥処

対象は羊や亀を殺した者

その名の通り真っ暗闇で、闇火や熱風で罪人を苦しめます

不喜処

対象は法螺貝を吹くなど、大きな音を立てて驚かせたうえで、鳥獣を殺害した者

昼夜を問わず火炎が燃え盛り、熱炎の嘴の鳥、犬、狐に肉や骨の髄まで食われます

極苦処

対象は生前にちょっとした事で腹を立ててすぐに怒り、暴れ回り、物を壊し、勝手気ままに殺生をした者

あらゆる場所で常に鉄火に焼かれ、獄卒に生き返らされて断崖絶壁に突き落とされます

衆病処

名前のみで内容は不明。

両鉄処

名前のみで内容は不明。

悪杖処

名前のみで内容は不明。

黒色鼠狼処

名前のみで内容は不明。

異異回転処

名前のみで内容は不明。

苦逼処

名前のみで内容は不明。

鉢頭麻鬢処

名前のみで内容は不明。

陂池処

名前のみで内容は不明。

空中受苦処

名前のみで内容は不明。

鉄窟地獄

正法念処経」には表れないものの「観仏三昧海経」に伝わっている小地獄です。

詳細は不明。

 

最後に

いかがだったでしょうか?

等活地獄は殺生に纏わる罪を犯した罪人を裁く場所ですが、内容によって送られる部署は異なります。

罰も部署によって異なり、多苦処に至っては十千億種類の苦しみを与えられると言うではありませんか。

これを知っていれば殺傷なんて出来ませんね。